令和6年分の所得税等の定額減税を給与に反映しない企業は労働基準法に違反しうるという報道がありました。
定額減税は税金の話だから、労働基準法なんて関係なさそうに見えます。
なぜこのような話がでてきたのでしょうか?
【事務所お知らせ】労働基準法「賃金支払い5原則」
労働基準法は、労働者の働き方のルールを定めているものです。
このうち、労働者は会社や事業所で勤務することで得られる給与で自分や家族の生活を支えています。
会社や事業所はどのような事情があっても生活の糧であるお金をしっかり支払わなければなりません。
労働基準法ではこのお金を「賃金」といいまして、賃金を支払う際には5つの原則を守る必要があるとされています。
これを「賃金支払い5原則」といいます。
賃金支払い5原則とは、
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通貨で支払うこと
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全額支払うこと
ただし、法令で定められている場合には賃金から所得税や社会保険料を控除することができます。また、労使協定を結ぶことで法令以外の控除もできる場合があります。 -
毎月1回以上支払うこと
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一定の期日に支払うこと
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直接労働者に支払うこと
という5つから成り立っています。
今回の定額減税でのポイントは、2.の全額支払うことです。
「法令で定められている場合」に定額減税はあたるのか
5月30日付けで厚生労働省労働基準局監督課長から労働局労働基準部長宛に「令和6年分所得税の定額減税に係る申告、相談等への対応について」という通達が発出されました。
ポイントをまとめておきます。
- 労働者に6月以降の賃金での定額減税を先送りして年末調整で定額減税を行った場合には、本来源泉徴収すべき税額よりも過大な税額を控除することになる。
- こうした過大な税額の控除については「法令で定められている場合」に該当すると評価することはできないことから、労働基準法違反になるものと考えられる。
⇒この考え方について、労働局や労働基準監督署の職員に対して周知をするとともに、もし定額減税について違反があるとして申告がなされ、これを受理した場合には厚生労働省へ報告することになる。
つまり、
〇6月以降の給与で定額減税分を差し引かず年末調整でまとめて差し引くのは「法令で定められている場合」ではないため労働基準法違反
ということです。
定額減税で申告や相談を受ける意味があるのか
正直、この発出文書を見たときに思ったのは、確かに法律にのっとって考えたらまあわかると。
でも、現実的ではないなと感じました。
本人や同一生計配偶者・扶養親族の人数によって定額減税額が変わりますし、もともと天引きされる所得税の金額が大きければ毎月の給与から反映すれば実感がわきます。
ただ、実際に毎月の給与明細をじっくりと見ている従業員がどれだけいるでしょうか。
6月から給与明細に定額減税額を記載することになりましたけどそれでも見ない人は見ないです。
あと、なぜ年末調整でまとめて差し引くことが労働基準法違反になるのかがいまだによくわかりません。
年末調整の結果として、毎月の給与で反映できていない定額減税を反映させたらきっと例年よりも多く還付されるはずです。
おそらく、1年というスパンで考えるのではなく1月単位で考えてほしいということなのかもしれません。
ただ、労働基準法違反だとして報告する必要があるのか。
正直個人的にはもっと取り締まるべきものがあると思うんです。
- 賃金不払い
- 残業時間
- 健康診断の実施
- 36協定の届出
定額減税ってそこまでしばってしまうものなのかがいまだによくわからないのです。
まとめ
まあこのような発出があったことから、定額減税は6月から順次控除していくのが従業員から指摘が出ない方法なのかもしれません。
個人的にはもっと大事なものがあると思うので、税務署もそうですが労働基準監督署も大変だなと感じてしまいます。
では。