年金相談をしていますと、同業者や親族等から聞いた話として正しいのかどうかの確認にお越しになる方が多いです。
先日このような質問がありました。
収入があったら年金が減らされる?
先日お越しになられたのは、個人事業主の一人親方です。
老齢年金の請求の手続きを進めていく中で、「収入があったら年金減らされるって聞いたんだけど…」と相談を受けました。
実際、年金をもらえる年齢以降でも厚生年金に加入しながら働くと年金額が調整される場合があります。
「在職老齢年金の調整」という制度です。
この制度は、次の1~3を合計した額が基準額51万円を超えた場合に、超えた金額の半分が年金額から減らされるという制度です。
- 1か月分の年金額(老齢厚生年金の報酬比例部分)
- 調整する月の給与額(日本年金機構に会社から届け出ている標準報酬月額)
- 過去1年間の賞与の1/12の額
例えば、65歳の男性で、1か月分の老齢厚生年金が12万円・給与月38万円・年間ボーナスが120万円(月10万円)である場合には、
- 1~3の合計額 120,000円+380,000円+100,000円=600,000円
- 51万円を超えた金額の半分 (600,000円-510,000円)×1/2=45,000円
→月45,000円が年金額から減らされる - 1か月の老齢厚生年金 120,000円-45,000円=75,000円
となります。
ここでのポイントは、一人親方が得た事業収入がたくさんあったら年金が減らされるのかどうかです。
年金が調整されるのは、厚生年金保険に加入をして一定以上の給与や賞与を受け取っている場合です。
会社員の方ですと、会社で厚生年金に加入をして保険料が給与や賞与から天引きされているかと思います。
厚生年金の保険料を払っている方が調整の対象です。
そのため、一人親方が得た事業収入がいくらあったとしても厚生年金に加入していなければ年金との調整はなく減らされることはありません。
【事務所お知らせ】不動産収入や農業収入があったら?
では、収入が事業収入以外ならどうでしょうか。
例えば、不動産収入があるとか、農業収入があった場合です。
この場合でも、年金が調整されるのはあくまで厚生年金保険に加入していることが前提です。
厚生年金保険に加入していなければ、いくら不動産収入や農業収入があったとしても年金との調整はなく減らされることはありません。
実際、農家の方が老齢年金の請求にお越しになられたときに同じ質問をされたことがあります。
確定申告は必要
年金は調整されることはありませんが、一人親方の場合には事業収入があります。
老齢年金も所得として所得税や住民税の対象となりますので、事業収入と年金収入2つの収入が出てきます。
2つの収入を合わせて確定申告の提出が必要になります。
確定申告の結果として、所得税や住民税など税金を払う場合も出てきます。
この場合、老齢年金に関しては毎年1月ごろ年金の源泉徴収票が日本年金機構から送付されてきます。
その源泉徴収票と事業収入や経費を集計した決算書を添付して確定申告を行います。
提出期限は3月15日まで(令和7年分の申告は令和8年3月16日まで)です。
まとめ
今日の内容をまとめてみます。
- 年金が減額されるのは「厚生年金に加入して働く人」だけ
- 「在職老齢年金」という制度により、厚生年金加入者が得る給与や賞与と年金の合計額が一定の基準を超えると、年金が減額されます。
- 基準額は令和7年4月以降、月額51万円です。
- 個人事業主の「事業収入」は対象外
- 一人親方などの個人事業主が事業で得た収入は、厚生年金に加入して得た給与や賞与ではないため、年金が減額されることはありません。
- 事業収入がいくらあっても年金は全額受け取れます。
- 不動産収入や農業収入も対象外
- 事業収入と同様に、不動産収入や農業収入も年金の減額対象ではありません。
では。