租税三原則「公平・中立・簡素」ってどこへ行った??

税務職員をしながら思っていたことがあります。

租税三原則「公平・中立・簡素」という言葉、聞いたことありませんか?

私の勉強不足かもしれませんが、この租税三原則って年々崩れているように感じませんか?

特に「公平」と「簡素」

特にここ数年でかなりおかしな方向に行っている気がするのです。

なぜそう思うのかを書いてみたいと思います。

これから税理士になろうと思っている人間がこんなこと書くのは問題かもしれませんけど。

ちなみに、「公平・中立・簡素」の言葉の意味はこちらにも記載があります。

[なぜ、税を納めなければならないのでしょうか] 税の決定者 | 税の学習コーナー|国税庁

公平性って?

公平の原則とは、様々な状況にある人がそれぞれの負担能力(担税力)に応じて支払うことをいいます。

例えば、所得の多い人は税金を多く負担してもらう一方、所得の少ない人からは負担を減らす、というものです。

最近の法改正の動きを見る限り、所得の多い人を優遇し、所得の少ない人の税負担が増えてきているような気がしています。

法人は、中小法人の税率軽減など法人であるからこそ受けられる特例が多いのに、個人では配偶者控除などの所得控除をちょっとずつ改正することで負担を増加させていると思っています。

どちらかというと法人より個人ひとりひとりの方が弱者だと思うのに、負担は逆行している気がしてならないのです。

もちろん個人でも富裕層の方がおられるのでなんとも言えませんが、法人で経営していると税負担が優遇されることを知った人は、会社を設立することを考えるでしょうね。

中立って?

中立の原則とは、税制ができるだけ個人や企業の経済活動を歪めることがないようにすることをいいます。

これも租税特別措置法という時限的ではあるものの政策的に決まる法律の連発で、経済活動に混乱をきたしているような気がします。

普通に税制改正は毎年行われています。もちろんそのときに必要だからこそ状況に応じた税制を考えるのだと思うのですが、これが最近では逆に大きな混乱を招いているように感じるのです。

その最たる例が、消費税の軽減税率から続く消費税の改正だと思います。

軽減税率導入当時、税務署内でもパニック状態となっていました。

飲食店だと8%と10%で複数の税率が適用されることとなり、新たにレジを導入する必要が出てきましたし、そもそもこれによりどうしたらいいのか迷ってしまう事業者も多くいたようです。

これからインボイス制度の導入もありますので、ますます混乱しかねない状況が発生しそうな予感がします。

年々複雑化する税制ー簡素って?

簡素の原則とは、税制の仕組みをできるだけ簡素なものとし、納税者が理解しやすいものとすることをいいます。

一番の問題点はこの「簡素」。

年々複雑になってしまう税制。国民全員が負担する消費税ですら簡素ではなく複雑極まりない。

広く国民全体に理解させるために、もっと簡素にすべきところがあるのではないかと。

条文を読んでいても正直意味が分からないところも多いですし、原則があっても例外規定が多すぎて本質が見えてこないものもあります。

先ほどの例に挙げた消費税の軽減税率。

現場では不評でした。私はいまも納得がいかないところです。

なぜ今それを導入しなければならなかったのかが理解できなかったのです。

飲食と新聞に軽減税率を適用したこと、飲食の中に8%と10%両方が存在してしまうこと(テイクアウトと店内飲食で異なる税率など)。

軽減税率導入のパンフレットを見たときに、「何これ…」とあきれてしまいました。

その後、国税庁ホームページにアップされた「軽減税率に関するQ&A」。

消費税の軽減税率制度に関するQ&A目次一覧|国税庁

開いた口が塞がりませんでした。

そもそもQ&Aを出さなきゃならないくらい複雑なんだ、と言っているようなものです。

公表された消費税の申告書様式も、正直いきなり書けると言われたら自信がありません。

どうもその場限りの対応だけで、将来のことをまったく見据えていないように感じます。

消費税に限らず所得税でも。

会社員が多く関わるであろう年末調整で、昨年から配偶者控除や扶養控除などの所得要件が変更されています。

これに伴い年末調整書類の様式が変更になりましたが、この書類は本来会社の経理や人事担当が書くものではなく、経理や人事を経験していない普通の従業員に書いてもらうものです。

その人たちにこの書類の内容がすぐに理解できるのだろうかと。

国税庁でも年末調整用のソフトが導入されましたが、使い勝手がいまいちでした。

かなり手間がかかってしまいこれだと別のソフトでやってしまうほうがいいかもしれないなと思ってしまいました。(実際、私はSmartHRで年末調整書類を作成しました)

簡素どころか、年々おかしな方向へ複雑化してしまっているような気がします。

税理士としての役割を考えてみるー私はこうしたい

今私が税理士として活動していくうえで考えていることは、税制が簡素になることは今後なくて、おそらくますます複雑化すると思っています。

そのため、複雑になっていく税制をいかに分かりやすくお伝えできるか、税制自体を私自身ももっと理解を深めていくことで還元できればいいなと。

私がやりたいと思っている業務である「税務調査対応」。

申告した時点ではまだ正解かどうかは分かりません。いつか来るであろう税務調査が答え合わせの時です。

適当に申告したりそもそも申告しなかったりする理由のひとつに、どうやったらいいか分からなかったという方がいます。

その気持ち分からなくもないです。なぜなら複雑だから。

でも税理士や税務署など誰かしらに相談していればそういうことにはならなかったのもしれないなと。

だから税の専門家という意味で税理士がいるのだと思うのです。

もちろん私も一納税者ですので、申告と納税は絶対しなければなりません。

自分もつまづき失敗しているところ、間違えたところを相手にお伝えすること。そうすることで何かに気づいてもらえたらなと思うのです。

ただ、税理士にすべてをゆだねるのではなくて、あくまで一個人も納税する義務を負っているわけで、ひとりひとり税金のことをもっと知っておくことが重要だと思うのです。

その手助けならいくらでもお手伝いしたいですし、自分も勉強になると思っています。

まとめ

今回はちょっとお堅い話になってしまいましたが、いつか書こうと思っていた内容です。

独自の見解ですので、ちょっと言葉足らずなところもあろうかと思います。

税務署で勤務していたときに、「税金がよく分からない」とお客様から言われて説明してもどこまでほんとうにご理解いただけているのか分かりませんでした。

それだけ条文の表現ひとつひとつが難しくて。言い換えて意味が変わってもおかしいかなと思ったり。

ただ、できるだけ詳しく説明できるように自分も日々自己研鑽しなきゃならないなと気づかされました。

退職した今だからこそその気持ちを強く持っています。

では。

[事務所お知らせ]

タイトルとURLをコピーしました