好きではなかった税務調査

今までいくつか税務調査のことを書いてきましたが、担当者として税務調査は好きになれませんでした。

こんなこと言ったら税務職員として失格だ、と言われかねないんですけどね。

最後までなぜ好きになれなかったのかお伝えします。

税務調査の成績が評価対象になっていた

税務署では、税務調査の成績としてある程度ノルマのようなものが科せられます。

その成績とは、全調査事案のうち修正申告や更正処理をした割合と非違金額であり、そのうち不正割合は別に集計されます。

一番評価されないのは、申告是認(調査で誤りがない)があったときです。

私が調査官だったときには、この申告是認だけは絶対するなと言われてきました。

前年よりも数値が悪かったり、申告是認が多いと、国税局のほうからどうなっているのだとお叱りの連絡がきたりします。

税務調査の成績がよければ幹部は評価されますし、もちろん担当者も評価されます。

調査部門での評価は、税務調査の成績に左右されます。

私は、「不正を見つける・修正申告させることが偉い」という風潮が好きではありませんでした。

税務調査は、会社の不正などを防止するという側面もあるかもしれませんが、一方で適正な申告をしていただくという意味での調査というのもあると思っています。

たとえ、調査にお伺いしても適正な申告をされているのであれば、それでいいのではないかと。

この会社はどこかおかしいという怪しい視点で常に調査をするというのが自分には合いませんでした。

もちろん、上司に指示されていますから、怪しいという想定で準備をし調査に出かけるのですが。

ある先輩に、申告是認が少ないとほめられたことがあります。

調査の成績で評価されてしまうんだ、とちょっと残念な感じになりました。

「自分はこういう調査をして重加算税を賦課できた」という自慢話をする方が多かったので嫌な気持ちになったこともありました。

それを聞いて「不正も見つけなきゃ、修正取らなきゃ」と思って、無理やりな調査をしてしまったこともあり、自分でも反省していますね。

調査事案の選び方で大きく変わってしまう

通常、統括官が調査事案を選び、部下に指示します。

この調査事案を選び方ひとつで、調査内容がかわってしまうこともあります。

誰が見ても誤りが想定されるものと、そうでないもの。

また、税務署ごとで調査は行われるのが通常ですので(大企業は国税局ですが)、地域によって会社が多いところ少ないところがあります。

当然、会社が多いところほど事案は多いわけで選ぶのに迷うことはないのですが、会社が少ない地域だと調査事案として選ばれる会社自体が少ないので選ぶのに迷ってしまうことがあります。

規模の大小にかかわらず調査に行く

売上金額の大きい会社とそうでない会社関係なく、選ばれた会社に調査に行きます。

部署がたくさんあり組織として十分成り立つ会社と、小規模法人で代表者のみという会社も調査対象となるわけで、誤りがあると修正割合が上がり同じ1件として評価されるのです。

特に、小規模法人だとそれほど資金に余裕がなく、誤り金額自体も少額であると想定される場合でも調査に行かなければならないのです。

そして、少額でも追加徴収し納付させるのです。

正直、私はそんなに小規模で資金に余裕のない法人は調査を見合わせてもいいのではと思ったことがあります。

儲けの出ている法人に調査に行くべきで、画一的な調査は不要なのかなと思ったり。

小規模法人ほど適正な申告に協力的だと思います。

大規模法人は、組織内の意思疎通が取れていないことも多く、単純な誤りや不正で多額の徴収がされるような感じがあります。

無理やり調査している?

先ほどと同じかもしれませんね。

どうも無理やり調査事案を作っているような感じがしています。

本当に調査すべき会社なの?と思うようなところに調査に行ったこともあります。

関与税理士にも不思議がられるような。

税務署内は部門単位の編成となっているため、他の部門の事案に触ることは基本しません。

もう少し組織全体で調査事案を選んだらいいのに、と思っていましたね。

まとめ

ちょっと言い過ぎたかもしれませんが、あくまで私見です。

私が当時思っていたことをそのまま書きました。

今現在コロナの影響で、税務調査にお伺いすること自体が困難になってきていていると思います。

税務調査の件数を増やすことよりも、もっと効率的に適正な課税をチェックできるような体制を作っていただけたらなと思っています。

では。

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