今回は遺族年金のお話を。
夫が亡くなった場合に妻が遺族年金を受け取ることがあります。
その場合、遺族年金を受け取る妻の年齢や妻自身のかけていた年金により勘違いされやすいところがあります。
妻が受け取る遺族年金
夫が亡くなり、妻が遺族年金を受け取るとした場合、高校を卒業した子どもがいなければ妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金がありますが妻が受け取れるのは遺族厚生年金です。
遺族厚生年金は、会社などに勤務されて厚生年金に加入されていた夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3を妻が受け取ります。
つまり、夫の老齢厚生年金は給与やボーナスの金額により変動しますのでみんな同じ金額ということはありません。
なので、夫の厚生年金の加入期間が短いとか、加入期間が長くても給与やボーナスの金額が少なければ妻が受け取る遺族厚生年金の金額は少なくなります。
【事務所お知らせ】65歳で取り扱いが異なる
年金制度は、原則として1人1年金とされており、老齢・障害・遺族の各年金は同時に複数を受け取ることができません。
しかし、例外もあって65歳前と後で取り扱いが異なっています。
妻が65歳未満の場合
夫が亡くなり妻が65歳未満の場合は、1人1年金の取り扱いのままです。
もし遺族厚生年金を受け取っている妻が65歳未満でもらえる特別支給の老齢厚生年金の権利を得た場合には、遺族と老齢の2年金のうちどちらかを選択する必要があります。
実際、特別支給の老齢厚生年金を請求する際に、選択申出書というものを年金事務所などに提出することにより有利なほうを選んでいただけます。
ただし、妻の老齢厚生年金の金額は雑所得として税金を計算する対象となりますけど遺族厚生年金は非課税とされています。
なので、金額が同じくらいなら遺族厚生年金を選択いただくという場合が多いかなと思います。
また、夫が厚生年金20年以上をかけて亡くなった場合、妻が65歳になるまでの間配偶者の手当として中高齢の寡婦加算が遺族厚生年金に上乗せされます。
妻が65歳以上の場合
妻が65歳になりますと、1人1年金の例外が発令されます。
妻自身が65歳から受け取れる老齢基礎年金(国民年金を払っていた分)と老齢厚生年金(働いていた分)のほか、遺族厚生年金も受け取ることができます。
ただし、ここで注意点があります。
妻は老齢厚生年金と遺族厚生年金という「厚生」と名の付く2つの年金があるわけですけど、このうち、老齢厚生年金を優先して受け取ります。
一方で、この老齢厚生年金に見合う遺族厚生年金の金額を支給しないこととし、老齢厚生年金を超える部分の差額の遺族厚生年金のみ受け取れることにしています。
このことを「先あて調整」などと言ったりします。
例えば、妻66歳が老齢基礎年金80万円と老齢厚生年金40万円を受け取っており、遺族厚生年金が100万円だったとした場合、
- 老齢基礎年金は影響を受けないため80万円を受け取れる
- 老齢厚生年金40万円を優先で受け取る
- 遺族厚生年金100万円-老齢厚生年金40万円=遺族厚生年金60万円しか受け取れない
したがって、
を受け取ることになります。
ちなみに、老齢基礎・老齢厚生年金については雑所得として税金の対象となり、遺族厚生年金は非課税です。
あと、中高齢の寡婦加算は65歳を過ぎると加算されなくなります。
年間で60万円を超える金額がなくなりますのでびっくりされる方も多いですね。
妻は繰下げ請求できない(現状)
あと、残された妻の話です。
妻自身が65歳になりますと、本来であれば自分の老齢年金を1年間以上置いておいて増やすという「繰下げ制度」を選択することができます。
しかし、遺族年金を受け取っている妻は繰下げ制度を利用することができません。65歳から通常通り受け取っていただくことになります。
ただ、この制度は以前から問題があるとされていました。
なぜなら遺族年金は夫が亡くなったことにより受け取れるものですので、妻自身の老齢年金には一切関係ないものですよね。
それなのに選択できるはずの繰下げ制度が使えないのはおかしいと。
なので、今後遺族年金を受け取っている方でも繰下げ制度を利用できるようにすると議論されているところです。
まとめ
今回は、夫が亡くなった場合妻が受け取れる遺族年金について解説してみました。
遺族厚生年金は一律ではないことと、自分の老齢厚生年金がある場合には遺族厚生年金は差額しか受け取れないということがポイントです。
では。