年の途中で日本を出国する従業員がいる場合に年末調整をし忘れるケースが多いです。
また、出国後非居住者となった従業員が国内勤務に対する給与を受け取った場合、どのようにすればいいのでしょうか。
今回は、出国時と出国後の源泉所得税の取り扱いについてお伝えします。
日本を出国する従業員の年末調整
例えば、令和7年8月15日から2年間の予定で従業員を外国に派遣することになった場合です。
年末調整は、扶養控除等申告書を提出している従業員(居住者)については、その年最後の給与を支払うときまでに行うのが原則です。
しかし、1年以上外国で勤務する予定で出国することにより居住者から非居住者になります。
そのため、出国日の翌日(8月16日)から非居住者として取り扱われるため、出国するときまでに出国前に支給日が来ている給与の総額を対象に年末調整を行います。
この場合の所得控除ですが、
- 社会保険料・生命保険料・地震保険料:出国日までに払ったものが対象
- 配偶者や扶養控除等:全額控除できる(日割り計算はしない)
となります。
例えば、以下の図のように1月から8月15日までに支給日が来るもの(7月31日)を年末調整の対象として計算をすることになります。

出国後に支払われる給与の源泉徴収
先ほどの図の続きで、次の給与支給日である8月31日は非居住者となっていますね。

年末調整の対象となるのは、居住者が支払いを受けるものに限られていますので8月31日の給与は年末調整の対象とはなりません。
この場合、8月31日の給与を計算する期間が7月21日から8月20日までとなっており出国日をまたがっています。
7月21日から8月15日までは国内の勤務に対応していますので、原則として非居住者に支払う国内源泉所得として支払額の20.42%を源泉徴収する必要があります。
しかし、
- 給与計算期間が1か月以下
- その給与の全額が国内勤務に対応するものではない
この2つの要件を両方満たす場合には、全額が国内源泉所得に該当せず源泉徴収をしなくてもかまわないことになっています。
今回の例ですと、
- 給与計算期間:「7月21日から8月20日までの1か月」なので1か月以下
- その給与は国内勤務に対応するものと国外勤務に対応するものが含まれている
→全額が国内勤務に対応するものではない
2つの要件を満たしますので、源泉徴収をしなくても大丈夫です。
まとめると、出国後に支払われる給与の源泉徴収については以下のとおりです。
①給与計算期間1か月以下
②その給与の全額が国内勤務に対応するものではない
→源泉徴収しなくてもよい
賞与の支払いは注意
一方で、出国後に支払われる賞与については注意が必要です。
出国後に支払われる国内勤務期間に対応する賞与については、非居住者に支払う国内源泉所得として支払額の20.42%を源泉徴収します。
国内勤務期間に対応する部分については、賞与の計算期間のうち国内勤務期間を按分して求めます。
賞与の計算期間については通常半年など1か月以下になることはないですので、例外に当てはまらず原則通り非居住者に支払う国内源泉所得として源泉徴収します。
まとめ
今回は、日本を出国する従業員の年末調整と出国後の源泉徴収についてまとめてみました。
出国日前後の源泉所得税は誤りも多いところですし混乱しがちですので整理しておきましょう。
では。
