同人作家の税務調査で怖いなと思うこと~著作権の帰属問題

同人作家の税務調査で実は危険だなと思うことがあります。

それは安易な法人成りにより税務調査に入られて多額の税金を払わなければならなくなったというものです。

これには著作権の帰属の問題がかかわってきます。

私が同人作家の法人成りをおススメしない大きな理由になってきました。

著作権の帰属の問題とは?

日本の著作権法では、原則として著作物を創作した個人が著作権者となります。

したがって、同人作家が著作物から収入を得る同人作家の所得となるのが一般的です。

しかし、個人の所得税の税率は所得が増えるほど高くなり最大で45%税金を納めることになります。

そこで、個人事業主から法人へと変更をして著作権を個人から法人へ移転するということを考えます。

法人税の税率は最大で23.2%ですから、著作物から受ける収入とそれにかかる経費を差し引くことで節税をするという方法が用いられます。

ただし、著作権を個人から法人へ移転するために何の手続きを踏んでいないと、著作物から生じる収入は実質的に著作権者である同人作家の所得とみなされてしまいます。

つまり、税務調査では法人で計上するものではなく所得を同人作家に戻すように判断されるリスクが高くなってしまいます。

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税務調査でのリスク

一般的には、個人事業主の税務調査よりも法人の税務調査のほうが調査の割合は高めです。

意外と多いのは法人設立直後の税務調査で、個人事業主時代の問題点を指摘するというもの。

今回の同人作家の法人成りの場合には、著作権の帰属が問題となります。

もし同人作家の所得になると税務署側が判断したら、法人の所得は減ることになります。

一方で、同人作家の所得は増えます。

税率って法人税のほうが所得税よりも低いですから同人作家の所得から追加で税金を取ることができます。

また法人への移転が譲渡であるとすれば、消費税の課税売上げに含まれることになりますので消費税の負担という問題も出てきてしまいます。

いわば、法人の税務調査と個人事業主の税務調査が2回行われてしまう可能性があるのです。

法人成りを考えるひとつに節税があります。

節税を考える同人作家は売上も大きくなっていますし、インボイスを登録していると消費税を毎年申告しているかと思われます。

そのため、所得税と消費税を追加で納めなければならないリスクがあります。

著作権の価格の問題

ただ著作権の帰属について、移転の仕方と価格の設定が問題になるかと思います。

著作権の法人への移転について、譲渡や有償貸付け・無償貸付けの方法があります。

もし著作権を譲渡したとした場合には譲渡所得を計算することになりますけど、譲渡収入ってどう決めるんでしょうか?

著作権については相続税で決められた評価額を用いてもいいような気がしますけど実際どうなんでしょうか。

もし著作権を有償で貸し付けたとした場合には、使用料の設定をすることになります。

では、使用料っていくらなんでしょうか?

無償貸付けの場合には所得はゼロになります。

もし税務調査で著作権の移転の指摘を受けた場合には、まずその収入を計算した根拠を調査官から示してもらうことが大事です。

契約の明確化

結局、著作権の帰属が問題となるのは契約の内容がはっきりしていないことによります。

何も取り決めていないから税務署から指摘を受けてしまうんですよね。

そのため、法人と同人作家の間で「法人に著作権が帰属する」契約を結んでいることが大事になります。

もし今の段階で特に契約を結んでいないのなら、新たな契約として「この時点から著作権は法人に帰属する、その価格は個人の時の〇倍」などと記載は必要ではないかなと。

つまり、法人に帰属することを明らかにすることにより同人作家に帰属することを回避できるようにすべきではないかと考えます。

まとめ

以前同業者から相談を受けてほかの同業者と話し合いをしたのですが、結局、

  • 法人成りにより税務調査のリスクを十分に説明する
  • 契約は大事
  • 法人成りをするメリットはかなり少なくなっている

ことは理解しておくべきなのかなと思います。

では。

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