会社員をしながら農業をされる兼業農家の方も増えています。
ご自身が会社からもらう給与収入のほか、農業をしてもらう農業収入の両方を受け取れますがその場合には確定申告をする必要があります。
兼業農家で「節税」?
会社員としての給与所得のほか、農家としての農業所得があると確定申告をすることになりますが、農業所得が赤字の場合には損益通算をすることができます。
農業所得で赤字が発生している場合には、給与所得と損益通算をすることにより、当初納めるべきだった税金よりも少なくなりますので還付を受けることができます。
例えば、給与所得が100の黒字・農業所得が30の赤字だった場合、損益通算をすることにより100-30=70の黒字となり70に対して税金を計算することができます。
当初100の所得だったものが70で済みますので税金を多く納めすぎています。
そのため確定申告をすることにより税金の還付を受けることができるわけです。
この損益通算を利用した節税手法が多く取られ兼業農家も利用されていたようです。
【事務所お知らせ】農業所得による赤字が損益通算できないこともある
しかし、農業所得による赤字が必ずしも損益通算できるとは限りません。
農業所得と認められるかどうか、つまり、農業所得を得るための活動が一般的に事業を行っている程度かどうかで判断するのが原則です。
いわゆる「社会通念上」という一般的な見方からしたらという抽象的な表現になってしまっていますので判断するのは厳しいものがあります。
そのため、令和4年の確定申告から、
と形式的に判断をすることになりました。
例えば、会社員としての給与収入がある兼業農家の方が、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、雑所得と判断することになり農業所得とすることができません。
雑所得の場合は損益通算をすることができません。
帳簿書類の保存だけすればいいの?
では、農業所得と認められるために帳簿書類の保存さえすればいいということになりそうですけど必ずしもそうではありません。
例えば、会社員としての給与収入がある兼業農家の場合、
- 農業から生じる収入金額がかなり少ないと認められる場合
- 農業所得を得るための活動に営利性がないと認められる場合
などは、農業をしている(事業をしている)と認められるかどうかを個別に判断していくことになります。
そのため、必ずしも農業所得になるとは限りません。
むしろ、兼業農家の場合には会社員としての勤務の合間に農業を行っているため、収入がかなり少ないことが予想されます。
農業収入から経費を引いた農業所得の赤字が一定年度続く場合には、活動そのものに営利性が認められないと判断されてしまう可能性があります。
雑所得になる場合のデメリット
農業所得ではなく雑所得となってしまうデメリットとしては、損益通算ができないというもののほか、以下のような青色申告の特典は受けられません。
- 青色申告特別控除(10万円や65万円)
- 青色事業専従者給与
- 純損失の繰越し
- 少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を買った場合に全額経費にできる)
まとめ
今回は、兼業農家の確定申告の注意点について書いてみました。
農業所得として判断されるためには一定のハードルを越える必要があります。
農業をしているから農業所得だと思いたい気持ちはわかりますけど、安易に考えていると税務署から指摘を受けかねませんので注意したいところです。
では。