確定申告の時期になると、「還付金もらえるから申告をしよう!」ということでご相談をお受けすることがあります。
たしかにお金が入ってくるのでラッキーという気持ちもわかります。
しかし、一方で還付そのものがなぜ起こるのかを知らずに確定申告をしようとしている人がいるのも事実です。
確定申告の意味
確定申告は、1年間で納める税金を確定するという作業です。
1年間で受け取った収入から経費を差し引いて所得(儲け)を計算したうえで、医療費控除や扶養控除などの控除を差し引いて、それに税率をかけて税額が確定します。
ただし、収入を受け取る際にすでに所得税が前払いされているものがあればそれを差し引きます。これを源泉徴収といいます。
つまり、
となるわけですが、源泉徴収のほうが大きくなるケースでは納める税額がマイナスになります。
これが還付額です。
以下、具体的に数字を入れてみます。
仮に確定した税額が10と計算されたとして、すでに前払いされた所得税である源泉徴収が30あります。
前払いしすぎなわけですので20が還付されるわけです。
ここでのポイントは、
源泉徴収がなければ1年間で確定した税額がそのまま納める税額になりますので還付が起こることはありません。
ご相談いただく方の中には、医療費控除を受けると還付される、とウキウキしながら来られる方がいます。
お勤めの方であれば給与の源泉徴収票をお持ちです。
源泉徴収票における源泉徴収税額の部分が、すでに前払いされている所得税(源泉徴収)と同じ意味になります。
医療費控除は年末調整で入れることができませんので、確定申告で医療費控除を含めて計算し1年間の税額が確定します。
確定税額から源泉徴収票に記載されている源泉徴収税額を差し引いて還付を受けることになりますので、そもそも源泉徴収税額が0円だったら還付にはなりません。
説明を受けてショックで帰られる方も意外と多いです。
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国税庁からの注意喚起
昨年11月に国税庁から所得税の還付申告についてこのような注意喚起がなされました。
ポイントは赤線の部分になります。
- 昨今の還付申告には、架空の源泉徴収税額や各種控除額を記載して不正に還付を受けようとするものが見受けられる
- 必要があれば還付金の支払いを一旦保留し調査する
- 実態確認やデジタル活用による審査を行っている
- 悪質な不正還付申告書が提出され詐欺罪に該当する場合は、刑事責任の要否を検討したうえで告訴等を行う
つまり、
ということです。
源泉徴収税額が架空の数字なら還付も当然架空の数字となるわけですね。
基本的にe-Taxで申告する場合は添付書類は不要になっていますが捨てていいわけではありませんし、まったく書類がないのはもってのほかです。
それこそ架空の還付申告が作れてしまいますので。
添付書類が不要なだけで実務上7年間は書類の保管をしておく必要があります。
実際この注意喚起の下の部分には直近2年間の不正還付申告に基づいて調査して追加で納税させた件数と金額が掲載されています。
不正ですから加算税は「重加算税」という重たい罰金が科されていると思われます。
処理件数よりも追徴税額(追加で納税させた)が対前年より一気に上がっていますね。
国税庁がこの注意喚起を出さなければならないほど還付申告の不正が多いということなのかもしれません。
まとめ
今日は確定申告で還付される意味を知っていただくために、還付が起こる仕組みと注意点、そして国税庁から出された注意喚起について説明してみました。
還付申告はこのような不正還付が横行するようになってから一段とシビアになってきています。
還付がいったん保留されてしまっていたとしてもそれをきちんと説明できる資料の保管や正しい処理であるという根拠があればなんら問題はありません。
では。