ネイリストの方が個人事業主から法人へと移行する「法人成り」を検討されている場合があります。
法人成りをするメリットとデメリット、そしてネイリスト特有の問題点を書いてみたいと思います。
法人成りとそのタイミング
法人成りとは、株式会社や合同会社などの法人を設立して事業を法人に変更することを言います。
一定金額以上の売上を継続的に上げられるようになったら検討することになりますけど、具体的には売上高が1千万円を超えるときなどがあります。
売上高が1千万円を超えるときや個人事業を開業して2年経過したときに法人成りをすると、法人には2年前の売上がないため消費税を納める義務が原則免除されます。
ただし、インボイス制度の導入によりこのメリットはほぼなくなりましたけど。
あと、法人成りのタイミングとしては、個人事業の所得が900万円を超えるときがあります。
課税される所得金額が900万円を超えますと所得税の税率が33%となり法人税の税率よりも高くなります。
このほか、事業の拡大を考えているときも法人成りのタイミングです。法人でないと事務所が借りられないなど契約面で不利になることがあるからです。
【事務所お知らせ】法人成りのメリット
法人成りのメリットを挙げてみたいと思います。
- 役員報酬を受け取れる
- 所得税を節税できる:役員の給与が経費に、給与所得控除が使える
- 配偶者控除や扶養控除を受けることができる
- 退職金制度がある
- 出張手当を受け取れる
- 生命保険を活用した節税
- 赤字を10年間繰り越せる
- 税率が変わる
- 社会的な信用が得られる:登記が必要となり、会社法という法律に基づいて会社を運営する必要がある
法人成りのデメリット
一方で、法人成りのデメリットもあります。
- 法人の設立費用がかかる
- 赤字でも税金を払う必要がある
- 社会保険に加入する必要がある
- 事務負担が増える
- 役員報酬(給与)が毎月同額
- 接待交際費を全額経費にできない場合がある
このように法人成りにはメリットとデメリットの両方を含んでいます。
ネイリスト特有の問題点
ネイリストの方の法人成りについて相談をお受けすると個人的に気になることがあってお話させていただくことがあります。
売上が不安定
ネイル業界はお客様獲得競争が激しいとされています。
開業直後はホットペッパービューティーなどクーポン付き広告を出すことにより集客があり売上が出やすいです。
しかし、その後も引き続きお客様が来ていただけるのかは別問題です。
新規出店が周りであればその店にお客様を持っていかれる可能性があります。
なので売上が安定的に1,000万円を超える保証がないのが問題です。
たしかに利益率は高い仕事だと思います。
経費は商材や消耗品費が中心で、従業員がいれば給与の支払いくらいしかかかりません。
しかし、集客のための広告宣伝費も多くかかります。
課税所得が900万円を超えてもその所得が継続する保証はないのです。
継続して売上や所得が上がる仕事なのかというとネイリストは無理はしないほうがいいかなと個人的には考えています。
従業員が定着しない
従業員を雇うネイリストもいますが、実際その従業員が今後もサロンで働いてくれるかという保証はありません。
というのは、ネイルは副業であったり自宅で開業するなど働き方が多様な仕事です。
そのため、従業員が技術を覚えたらきっと独立開業したいだろうなという気持ちはネイリスト皆持っているそうです。
なのでネイルサロンで働く従業員は入れ替わりが激しいのです。
法人成りをすると社会保険の加入手続きのほか給与計算が煩雑になってしまいますので意外とデメリットが浮き彫りになってしまう可能性があります。
自分が厚生年金をもらいたいか
法人成りにより本人に役員報酬を支払うことができ、社会保険(特に厚生年金)に加入して保険料を払うことにより将来厚生年金をもらうことができます。
厚生年金に加入している期間は国民年金にも加入していることになりますので国民年金と厚生年金両方を受け取ることができます。
個人事業主である間は厚生年金に加入できませんので国民年金のみ。
なので、厚生年金をどうしてももらいたいという場合は法人成りを考えるのもひとつです。
まとめ
ネイリストの法人成りを検討するときには、一般的なメリット・デメリットのほか、業界特有の問題点も踏まえて安易に判断しないようにお話しています。
むしろデメリットのほうが強めに出ることがあるので積極的におススメしないように私はしています。
では。