材料が支給された工事の売上高計上と消費税申告

建設工事において、下請業者である一人親方が元請業者から工事代金のうち、材料が支給された分の金額を相殺して入金されることがあります。

この際、工事代金の売上高計上と消費税申告の注意点について書いてみたいと思います。

元請業者からの材料の支給

元請業者から材料が支給されることがあります。

この際、材料の支給の仕方としては、

  • 一人親方本人がお金を払って材料を買う「有償支給」
  • 元請業者が購入した材料を使い一人親方本人はお金を出さない「無償支給」

という形が考えられます。

また、同じ元請業者から受けた仕事であっても、状況により材料の支給が有償になったり無償になったりします。

そのため、あとで解説する消費税の申告でポイントとなる事業区分にあたっては、工事現場ごとに請負契約書を確認するなど材料の支給方法を確認する必要があります。

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有償支給の材料費の取り扱い

元請業者から支給される材料が有償の場合、請求書の内訳をみると工事代金を相殺した材料費の金額が書かれていると思います。

記帳を行うにあたっては、材料費と相殺後の振込み金額を売上高にすることがありますがそれだとミスをしてしまう可能性があります。

例えば、工事代金が100万円でうち元請業者から支給された材料費が40万円で、預金通帳に60万円が振り込まれてきたとします。

この際、工事売上高は60万円ではなく100万円で計上しないといけません。

一方で、材料費として40万円を預金から払ったとします。

つまり、仕訳をするとこんな感じになり相殺はしませんので注意しましょう。

  • (借方)普通預金 100万円  (貸方)工事売上高 100万円  工事代金受取
  • (借方)材料費 40万円     (貸方)普通預金 40万円   材料費支払

トータルの利益は60万円で変わらないので相殺後でも間違いではなさそうに思えますけど、消費税申告の際にミスをしてしまいます。

消費税の簡易課税制度「事業区分」

消費税の申告をする際には、原則課税のほか簡易課税を選択することができます。

2年前の売上金額が5,000万円以下である場合には事前の届出により消費税の売上高から直接消費税の金額を計算できる簡易課税制度を選択できます。

売上高に含まれている消費税に事業ごとに定められている「みなし仕入れ率」という経費に含まれている消費税を簡易的に計算したもの差し引くという方法です。

そのため、売上高を集計できれば消費税が計算できますので計算自体は楽になりますけど、みなし仕入れ率は事業区分ごとに定められています。

通常建設業を営んでいる方に関しては、材料の有償支給がある場合には第三種事業となりみなし仕入れ率70%が適用されます(つまり納付は30%)。

一方で、材料を無償支給された場合には、いわゆる加工賃として第四種事業となりみなし仕入れ率60%が適用されます。(つまり納付は40%)。

簡易課税で計算することに起こりえるミス

簡易課税で消費税を計算することにより起こりえるミスが2つあります。

1つは、売上高をもとに消費税額を計算しますので、売上高を材料費相殺後の金額で計算すると売上計上がもれてしまいます。

工事売上高100万円なのに材料費相殺後の振込額60万円を工事売上高にしていたら40万円の工事売上の計上もれが発生することになります。

この40万円分の消費税の納付が少なくなってしまうのです。

なので、仕訳をする段階で相殺しないでおくというのが大事になってきます。

もう1つが事業区分の誤りです。

第三種事業になることもあれば第四種事業になることもありえます。

その判断は材料の支給のされ方によります。

有償支給なら第三種・無償支給なら第四種です。

まとめ

一人親方の記帳指導ではよく相殺後の振込額を売上に計上されているケースが多いです。

所得税の計算をするうえで所得に大きな影響はありませんけど、インボイス制度を選択されている場合には簡易課税や2割特例で消費税の申告されているかと思います。

2割特例でも売上をもとに計算をしますので、売上の計上がもれていると消費税の納付額に影響を与えますので注意したいところです。

では。

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