青色申告をしている個人事業主の特典として、家族である従業員に対して給与を支払う場合には要件を満たせば経費にすることができます。
しかし、この要件が厳しく決められているため税務調査で否認されやすい項目にもなっていますので、注意点をまとめてみたいと思います。
青色事業専従者給与が認められる要件
青色事業専従者とは、青色申告者である事業主が行っている事業に専ら従事する15歳以上の生計一親族をいいます。
いわゆる「家族従業員」というイメージです。
青色事業専従者給与が経費として認められるための要件は以下の通りです。
- 事業所得や不動産所得を営む青色申告者である
- 青色事業専従者に対し、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した方法に従い、その記載した金額の範囲内で給与を支払うこと
(→青色事業専従者は給与を受け取ったこと) - その給与額が、労務の従事期間・労務の性質及びその提供の程度・その事業の種類及び規模・類似同業者の給与の支給状況から見て労働の対価として相当であること
なお、経費として認められた青色事業専従者給与は、その青色事業専従者側では給与収入となります。
また、青色事業専従者給与を受け取った人がいる場合、事業主の確定申告において配偶者控除や配偶者特別控除・扶養控除を受けることができません。
…って、ここまで書いてみてもちょっとピンとこないかもしれませんね。
ここからは要件をひとつひとつ説明できたらなと思いますのでお付き合いくださいね。
【事務所お知らせ】青色事業専従者給与の解説
例えば、青色申告書を提出している個人事業主と一緒に事業を行っている妻や息子に対して給与を払うとします。
「青色事業専従者給与に関する届出書」は、その年の3月15日までに税務署に提出しなければなりません。
令和7年から適用を受けるためには令和7年3月15日までに提出が必要でした。
今提出をした場合には令和8年以降の確定申告から青色事業専従者給与として経費にできます。
1.事業所得や不動産所得を営む青色申告者である
「青色事業~」と書いてある以上、青色申告を行っている個人事業主が対象となっています。不動産所得がある方も青色申告を行うことができます。
2.青色事業専従者に対し、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した方法に従い、その記載した金額の範囲内で給与を支払うこと
まず、個人事業主が一緒に事業を行っている妻や息子に実際に給与を払っていなければ経費として認められないことを示しています。
未払いにしている場合には原則として経費にできません。
ただし、未払いに相当の理由があり短期間のうちに実際に支払われる場合のみ経費と認められることがあります。
3.その給与額が、労務の従事期間・労務の性質及びその提供の程度・その事業の種類及び規模・類似同業者の給与の支給状況から見て労働の対価として相当であること
青色事業専従者給与っていくらが妥当な金額なのか、という話です。
家族従業員に対して払うものですから適当に決めてしまえるという問題点があり、労働の対価として相当な場合にのみ経費として認められます。
したがって、相当な程度を超える著しく高額な部分は経費として認められないことになっていますが、何をもって「著しい高額である」と判断するのでしょうか?
過去の採決や判決を見ますと、ほかの従業員の給与額を基準とする方法がまずあるのですが、家族従業員のみでは比較しようがありません。
なので、業種や事業規模が類似している同業者が設定している青色事業専従者給与額を基準とする方法を採用していることが多いようです。
税務調査で著しく高額だと指摘された場合は、青色事業専従者給与額の具体的な計算根拠を説明できるようにしておくことが大事になります。
勤務時間を記録しておくことや類似の仕事をしている同業者に家族従業員がいるか、その家族従業員の給与金額がいくらかを聴き取ったうえで設定すべきです。
つまり、何の根拠もなく適当に決めないことが大事です。
まとめ
青色事業専従者給与については、ほかにも論点はあって税務調査の場では個人事業主側と税務署側で主張が対立することが多い気がします。
また、青色事業専従者給与を払うときに所得税を天引きして税務署に納めなければなりませんし年末調整が必要になったりしますので注意したいところです。
では。