「令和2事務年度の所得税及び消費税等調査」から考えること

11月末に国税庁から「令和2事務年度の所得税及び消費税調査等の状況」が公表されました。

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

令和2事務年度中に行われた税務調査に関して統計的にまとめられたもので、実施状況や主な取り組み内容、申告漏れが多かった上位10業種が取り上げられています。

私も毎年チェックをしていて、もし今後税務調査を受けられる可能性のある個人事業主&フリーランスの方向けに知っておいて損はない情報だと思います。

昨年もこのブログで紹介させていただきましたので今年も総括してみたいと思います。

同時期に「法人税及び消費税調査等の状況」も公表されていますが、今回は個人事業主&フリーランス向けに所得税中心に話をすすめさせていただきます。

調査等の状況を簡単にまとめてみる

令和2事務年度というのは、令和2年7月~令和3年6月の期間を指します。

この1年は新型コロナウイルス感染が大きな影響を与えました。

ここでは、簡単に調査等の状況についてポイントをまとめてみます。

所得税の調査等の状況について

〇 新型コロナウイルス感染症の影響により実地調査の件数は大幅に減少したが、⾼額・悪質な不正計算が⾒込まれる事案を優先して調査し、1件当たりの追徴税額は増加
実地調査:実際にご自宅や事務所にお伺いして(「臨場」)調査を行う方法

文書等による接触方法を積極的に組み合わせることにより、簡易な接触による申告漏れ所得⾦額、追徴税額は増加
簡易な接触:原則ご自宅等に臨場することなく、⽂書や電話による連絡又は来署依頼による⾯接を⾏い申告内容を是正する方法

・実地調査の件数は減ったけど不正が見込まれる事案を優先して調査した
・実地調査の件数不足を補うため文書等による接触方法を組み合わせ簡易な接触を増やした

消費税(個人事業主)の調査等の状況

〇 新型コロナウイルス感染症の影響もあり実地調査の件数は大幅に減少したが、無申告等の調査を重点的に実施することにより、1件当たりの追徴税額は増加
〇 文書等による接触方法を積極的に組み合わせることにより、簡易な接触による追徴税額は増加

実地調査の件数は減ったけど無申告調査を重点的に実施した
実地調査の件数不足を補うため文書等による接触方法を組み合わせ簡易な接触を増やした

主な取り組み

  1. 富裕層に対する調査状況
    1件あたり申告漏れ所得金額は過去最高
  2. 海外投資を行っている個人に対する調査状況
    富裕層のみならず1件あたりの追徴税額は高水準
  3. インターネット上のプラットフォームを介して⾏うシェアリングエコノミー等新分
    野の経済活動に係る取引を⾏っている個人に対する調査の状況
    新たな分野も的確に申告漏れを把握
  4. 無申告者に対する調査状況
    所得税及び消費税ともに1件当たり追徴税額で過去最高

事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得⾦額が⾼額な上位 10 業種

昨年とランキングに変動があります。

この全国版のほかに国税局ごとの状況も見ることができます。

全国版ですと、

  • 昨年1位だった風俗業は圏外に
  • プログラマー、畜産農業(肉用牛)、内科医は昨年よりランクアップ
  • 経営コンサルタント、キャバクラ、太陽光発電は常連

大阪国税局版ですと、以下のような特色がありますね。

  • 昨年ランクインしていたすし、風俗業、バーは軒並み圏外となり、これまでランクインしていなかった業種が多い
  • とび工事、鉄骨鉄筋工事、屋根工事、解体工事のような工事業が軒並みランクイン

臨場と簡易接触の組み合わせれば全件調査できるかも!?

ここからは完全な私見です。

新型コロナウイルスの感染拡大により、納税者等との接触をできるだけ減らさなければならない状況になってしまいました。

ですので、実地調査は件数を大幅に減らさざるを得なかったわけです。

しかし、文書等による簡易な接触を増やすことで実地調査件数の不足を補え、結果として所得漏れや追徴税額が増加したと。

要は、実地調査は不正が見込まれる調査先を優先させること、そのほかは実地調査+簡易接触で対応できる。

ひょっとしたらすべての個人事業主に調査対象が及ぶ可能性が出てきたのかもしれないなと考えています。

これまでですと、実地調査はある程度年数がたたないとしないものでした。

しかし、簡易の接触という方法を取り入れることで、文書等だけで修正できる・少額な誤りのものまで調査対応とすることができるというわけです。

納税額がもともと少ない事業主まで調査対象が及ぶ可能性がありますます追徴税額が増えていくと思われます。

全件調査も可能な状況になりつつあるなと感じます。

これまで以上に調査の事前対策を

今回の状況を総括してみると、やっぱり実地調査と簡易接触を組み合わせることで調査件数を確保したいということ。

あと、先ほど挙げた上位10業種を見てみると、これまでランクインしていなかった業種がランクインしたり、国税局ごとに特色のある業種があったりします。

私がいつも思うのは、まずいつ調査が来てもおかしくないという意識を持つこと。

書類の保管やきちんとした経理や申告をしていれば別に問題はないわけです。

どこかでごまかそうという意図があると後で大変な目にあいます。

あと、一度所得漏れ金額が多かった業種については今後も同じ業種が調査される可能性があります。

調査すれば追徴税額が出てくるわけですからね。

大阪国税局版に出てきた「工事業」全般は要注意ですね。

まとめ

今回は「令和2事務年度の所得税及び消費税等調査」について総括と今後の対応について書いてみました。

この状況報告は毎年見ていると時代を反映しているなと感じますね。

上位10業種のランキングを見ると特に感じます。

それだけ時代に合わせた税務調査が行われているということなのかもしれませんね。

では。

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