消費税1%への引下げによる農家の影響を整理してみた

「食品の消費税が2年間1%になるらしい」

「だったら、食べ物を売っている農家はトクをするんじゃないか?」

そう思う方は実際多いのではないでしょうか。

ただ、結論から言うと、トクをする農家もいれば何もしなければ恩恵がない農家のほうが多いというのが実際のところです。

今回は、農家が知っておきたい「そもそもの仕組み」を整理してみたいと思います。

なお、この話は令和8年9月に国が方針(大綱)を示し国税庁がQ&Aを公表した段階のものですので今後変わる可能性があります。

何が変わる? ざっくり整理

飲食料品にかかる消費税が「令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間だけ1%」になります。

今は8%ですので、大きな引下げです。

  • 対象は、今の軽減税率(8%)の対象と同じ範囲の飲食料品です。梅やみかん・ミニトマト・インゲン豆などの農産物は対象です。
  • 2年たつとまた8%に戻ります

【事務所お知らせ】

 

消費税は「預かった分 − 払った分」を納める税金

消費税は、売上のたびに預かった消費税から、仕入のたびに払った消費税を引いて、その差額を納める仕組みです。

農家に当てはめるとこのような感じです。

  • 収穫物を売る:消費税を預かる(今は8%)
  • 肥料・農薬・資材・燃料などを買う:消費税を払う(10%)

この「預かった分」と「払った分」の差が納める消費税です。

消費税引き下げで農家に起きる「逆転」

ここからが今回のポイントです。

売上の消費税は8%から1%に下がりますが、肥料や資材を買うときの消費税は10%のままです。

すると、預かる税より払う税のほうが多くなる場面が出てきます。

そのときは、差額が還付(戻ってくる)になります。

数字で見てみましょう。

  • 税込売上:800万円(すべて1%の対象)
  • 税込仕入:400万円(肥料・農薬・資材・燃料など10%)
預かった消費税 払った消費税 結果
今(8%) 約59.3万円 約36.4万円 約22.9万円を納める
引き下げ中(1%) 約7.9万円 約36.4万円 約28.4万円が戻る

同じ農家でも、消費税の収支が約51万円変わる計算になります。

ここでいう「仕入」とは、肥料・農薬・資材・燃料・出荷用の資材・修繕費・設備などです。人件費、地代、利子、減価償却費は対象になりません。

「還付を受けられる人」は限られる

先ほどの表は、一般課税という方式で申告している場合の話です。

還付を受けられるかどうかは、今どの区分にいるかで決まります。

区分 消費税の申告 引下げの影響 還付
免税事業者 しなくてよい 売上が1%になっても、仕入の10%負担は残る。
ほぼ影響なし
なし
簡易課税 する(計算は簡単な方式) 国の特例で納付はゼロになる なし
一般課税 する(実際の仕入を差し引く) 預かる税より払う税が多くなる あり

免税事業者は、2年前の課税売上高が1,000万円以下で、消費税の申告をしていない方です。そもそも申告していないので還付もありません。

簡易課税は、実際の仕入ではなく、売上に応じた一定の割合を「仕入にかかった消費税」とみなす方式です。

今回の大綱で示された特例では、1%の売上にかかる消費税と同じ額を仕入の消費税として差し引くことができるようになっています。

そのため納付はゼロになりますが、簡易課税の方は還付を受けられません。

農家の場合、課税事業者のほとんどが簡易課税を選んでいます。

また、JA(農協)に出荷している方は農協特例があるため、インボイスの登録をしていない方も多いです。

つまり、何もしなければ、還付の機会がない方が大多数です。

「還付=トク」とは限らない理由

「じゃあ、一般課税にすればいいのか」と思うかもしれません。

ただ、すぐに飛びつくのは危険です。

次の点を考える必要があります。

2年後に元に戻る

令和11年4月以降は、売上8%・仕入10%に戻ります。

先ほどの例(税込売上:800万円・税込仕入:400万円=仕入が売上の半分)で、そのまま一般課税を続けると、納める税金は年に約22.9万円です。

簡易課税なら約11.9万円ですから、一般課税のほうが年に約11万円多く納める計算になります。

引下げ中に消費税の還付を受けても、その後の負担増と合わせて考えないとトクかどうかは分かりません。

2年間は戻れない

一度課税事業者になると、原則として2年間は免税に戻れません。

つまり、令和9年に課税事業者を選択した個人事業者の場合、令和9年・令和10年は課税事業者となるため消費税の申告が必要です。

 事務の手間が増える

帳簿とインボイスの保存・還付の申告が必要になります。

設備投資で戻れない期間が生じることがある

大きな設備を買うと、一定の条件で免税や簡易課税に戻れない期間(原則3年)が生じることがあります。トラクターや選果機などを買う予定がある方は要注意です。

つまり大事なのは、

「還付が出るか」だけではなく、「2年後の戻り方まで含めて得か」どうか

を考える必要があるということです。

まとめ

今後農家の方の多くは消費税の申告で判断に迷われるケースが増えると思われます。

来年4月からのスタートですので気にかけていただきたいと思います。

では。

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