年金を受け取っている方が亡くなりますと、未支給年金が亡くなった方の遺族に支給されます。
この場合、受け取った遺族の一時所得となりますので、場合によっては確定申告をすることもあります。
今回は、未支給年金と税金について書いてみたいと思います。
【事務所お知らせ】未支給年金とは
年金を受け取っていた方がお亡くなりになった場合、年金は亡くなった月までもらうことができます。
例えば、11月30日に亡くなった場合には、11月分まで年金をもらうことができます。
年金を受け取るのは偶数月の15日と決まっていますので、次の年金受取日は12月15日です。
12月15日には10月分と11月分の年金が受け取れるはずですが(年金は2か月分を後払いになっています)、受取人本人がすでに亡くなってしまっています。
そのため、生計を一にする遺族であれば請求することで年金を受け取ることができます。
例えば、夫婦のうち長くお勤めされていた夫が亡くなったらその妻に遺族厚生年金が支給されるため、遺族年金の請求と一緒に未支給年金の請求が行われたりします。
また、死亡した方がこれまで年金を請求されていなかった場合に遺族が年金を請求して年金を受け取った場合も同様に未支給年金となります。
未支給年金は遺族の一時所得
未支給年金は、受け取った遺族の一時所得とされています。
亡くなった方が受け取れる年金だったのだから相続財産に含まれ相続税がかかるのではないか?と思われる方もいます。
しかし、未支給年金は遺族固有の権利として保障されており、亡くなった方の相続財産には含まれず相続税はかかりませんが、遺族の方の一時所得となるとされています。
一時所得とは、賞金や生命保険契約の一時金・損害保険契約の満期返戻金などのように臨時的に一時で受け取るものであり、未支給年金もこれにあたります。
遺族本人からしたら急に手元にお金が入ってくることになります。
所得はもうけですからこれをもとに税金が計算されてきます。
一時所得は以下のように計算されます。
この後で、ほかの所得と合算する際には一時所得の金額を1/2します。
一時所得:収入金額150万円ーその収入を得るために支出した金額60万円ー特別控除50万円=40万円
総所得金額(税金をかけるもととなる金額)=40万円×1/2=20万円
⇒ほかの所得と合算しほかに控除がなければ税率をかけて税額を計算する
ここで、未支給年金の場合、収入金額は未支給となっている年金の受取額です。
一方で、その収入を得るために支出した金額は0円です(未支給年金を得るために払ったお金はありませんから)。
なので、未支給年金を受け取った場合の一時所得の計算はこのようになります。
所得が出たらそれをもとに税金が計算されますので、一時所得が出ないのなら税金はかかりません。
したがって、ポイントとなるのは特別控除50万円の存在です。
特別控除50万円を超えるかどうか
未支給年金を受け取ることが決まると、後日日本年金機構から以下のような「未支給年金決定通知書」が受け取ることになる遺族に交付されます。
「支給金額」欄を見ていただき、特別控除50万円を超える金額が記載されていたら所得が発生します。
一方で、特別控除50万円以下であれば所得0円ですから税金は発生しません。
つまり、特別控除50万円を超えるような未支給年金を遺族が受け取ったら税金がかかりますので確定申告が必要になります。
年金を受け取っていた方がお亡くなりになった場合には、亡くなった日によりますが最大でも3か月分の未支給年金しかもらえません。
そのため、一時所得が出ない可能性が高いです(年金額によりますけど…)。
しかし、年金を請求していなかった方がお亡くなりになった場合には、過去分も含めると多額の年金を一時に受け取ることになりますので確定申告は必要です。
実際の年金相談では…
年金相談では、未支給年金と遺族年金を同時に請求されることが多いです。
書類の作成とチェックに時間がかかってしまい未支給年金の税金までお話できる余裕がないことが多く申し訳なく思います。
ただ、年金を受け取っていた方が亡くなった場合の未支給年金は最大3か月分しか受け取れません。
特別控除50万円以下で一時所得が発生しない場合がほとんどなので、ご質問された場合にお答えするにとどめてしまっています。
本当は案内したほうがいいんだろうなとは思います。
しかも、ほかの所得が遺族の方にあると確定申告全体の説明をしないといけなくなります。
なかなか難しいですね。
まとめ
今回は、未支給年金と税金について書いてみました。
確定申告の時期になると無料相談会でこの未支給年金の取扱いについて質問をお受けします。
実際今年2月に行われた市役所での確定申告期無料相談はこのお話でした。
ただ基本的に税金に影響がないことが多いです。
ただ、年金を請求していなかった方の未支給年金で数百万を受け取った遺族の方がいたと年金相談に従事する社労士から聞いたことがあります。
この場合は必ず税金面も案内しないといけないですね。
では。