年金事務所調査の着眼点を解説していただきました

先日行われた社労士会の新規入会者研修で、年金事務所の方が事務所調査における着眼点について解説いただく機会がありました。

社労士会新規入会者研修を受けてきました

今回はその中から被保険者資格取得届と報酬月額変更届について書いてみたいと思います。

【事務所お知らせ】  

被保険者資格取得届とは

社会保険の加入の対象となる従業員を採用した場合には、採用日から5日以内に「被保険者資格取得届」を年金事務所に提出します。

資格取得届には、報酬月額を記入する欄があります。

基本給のほか、勤務先で決められている給与規定等により支給することが定められている手当(通勤手当や役職手当、家族手当など)も報酬に含める必要があります。

例えば、入社当初通勤手当や家族手当の申請があったものの、後日本人から住宅手当の申請があった場合。

この場合には、勤務先で実態を確認するために手当の支給までに時間がかかることがあります。

そのため、初回の給与の支給までに間に合わず翌月以降に支給される場合がありますが、この場合でも資格取得時の報酬に含めて計算するのが正しいです。

例えば、令和6年4月に基本給のほかに通勤手当と家族手当を含めた資格取得届を提出していたとして、4月に本来支払うべき住宅手当を5月にまとめて支払ったとします。

この場合は、令和6年4月に提出している資格取得届を訂正する必要があります。

月額変更届

毎年、4月から6月までの給与額をもとに7月に報酬月額算定基礎届(算定基礎届)を年金事務所に提出します。

そうすると、社会保険料の計算のもとになる「標準報酬月額」が決定し社会保険料が決まる仕組みになっています。

この社会保険料は9月分から翌年8月分まで適用されます。

したがって、給与を変更してもすぐに社会保険料が変わることはありません。

ただし、変更後の給与を3か月間支給して以下の要件をすべて満たした場合には、3か月目の給与支給後すみやかに報酬月額変更届(月額変更届)を年金事務所へ提出します。

月額変更届を提出する要件は、

  • 固定的賃金が変わった
  • 標準報酬月額との間に2等級以上の差が出た
  • 3か月とも支払基礎日数が17日以上ある

です。

2等級以上の差とは、「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」という標準報酬月額を決定する表にある等級が2以上差ができた場合です。

和歌山県の場合、例えば標準報酬月額が126千円から142千円に上がった場合が2等級になります。

あと、月給制でお仕事をされている従業員の方であれば多くて31日、少なくても28日ですので17日以上という要件を満たすのが一般的です。

「固定的賃金が変わった」とは?

ここで問題となるのは「固定的賃金」という言葉が何を指すのか、です。

固定的賃金が変わったとは、支給額や支給率が決まっている給与(毎回定額で支払われる基本給など)が変わったことをいいます。

例えば、

  • 昇給や降給
  • 日給から月給へなど給与体系の変更
  • 日給や時間給の単価の変更
  • 住宅手当や通勤手当など固定的手当の支給が変わった

などが該当します。

一方で、固定的賃金が変わったことに当てはまらないものがあります。

  • 残業手当が増えた:残業時間により変動するため
  • 勤務実績や通勤日数に応じて支給する手当(皆勤手当など)が変わった:臨時に支給されるものであるため

まず、固定的賃金が変わったことにならないケースをイメージしていただいてそれ以外は固定的賃金が変わったと判断される、と押さえていただくといいかと思います。

月額変更届を提出する場合の具体例

今回説明があったものとして、従業員に対して支給する通勤手当についてです。

ある会社では、車での通勤を認めており通勤手当を「出勤日数×通勤距離×ガソリン単価」で計算していたとします。

ここのところのガソリン代高騰によりガソリン単価を変更したとします。

この場合、ガソリン単価の変更により月額変更届を提出する必要があるかどうかが問題となります。

今回の例ですと、通勤手当は勤務実績や出勤日数に応じて支給されていますのでそもそも固定的賃金にはあてはまらないはずです。

しかし、その手当の根拠となるガソリン単価の変動は、固定的賃金が変わったことになり月額変更届を提出する必要が出てきます。

日給や時間給の「単価の変動」が固定的賃金が変わったことに当てはまるのと同じ理屈です。

まとめ

年金事務所調査の着眼点の中で、資格取得届と月額変更届について取り上げてみました。

なかなか難しい判断を伴うかもしれませんね。

悩む場合には専門家に相談されることをお勧めします。

では。

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