健康保険・厚生年金に加入する者しない者

今回は社会保険について取り上げます。

自営業者などが加入する国民健康保険と国民年金、サラリーマンや従業員として雇われている場合は健康保険と厚生年金に加入することになります。

ただし、あくまで原則であり例外も存在します。

健康保険と厚生年金について簡単に

まず、健康保険と厚生年金について簡単に説明してみます。

健康保険は保険料を支払うことでケガをした場合などに給付を受けられるものです。(実際は窓口での負担が3割になっています)

また、厚生年金はお勤めをされていると保険料を支払っていれば1階建て部分の基礎年金に加えて2階建て部分の年金として厚生年金が支給されることになります。

この健康保険と厚生年金を合わせて社会保険といい、ともに適用事業所というところで勤務する人を対象としています。

2つの制度の適用の要件はほぼ同じなので、健康保険と厚生年金は原則として両方同時に適用されることになります。

健康保険・厚生年金に加入しなければならない事業所

健康保険・厚生年金に加入する事業所のことを「適用事業所」といいます。

その中で事業主や従業員の意思を問わず強制的に加入しなければならない事業所のことを「強制適用事業所」といいます。

強制という言葉は普段は使わず、適用事業所と言ったら「強制」を指します。

では、どのような事業所を指すのでしょうか。

適用事業所には、以下のものがあります。

使用する人数に関係なし:国、地方公共団体・法人(1人法人を含む)
常時5人以上の従業員を使用する:個人経営法定16業種

ここで、使用するという言葉ですが、「雇っている」と置き換えてみるとわかりやすいかと思います。

「使用する人数に関係がない」=雇っている人数に関係がない
⇒1人でも雇っていたら加入しなければならない、ということです。

「常時5人以上」という言葉ですが、これは年間平均して5人以上の従業員を雇っている場合のことを指します。

勘違いされやすいのは、会社なんだけど1人で運営している場合です。

個人事業主から法人なりした場合を考えてみてください。

この場合、

会社=法人ですので、たとえ従業員がいなかったとしてもご本人1人がいるので適用事業所となり、健康保険と厚生年金に加入しなければならなくなります。

また、「個人経営の法定16業種」ですがこれを覚えるよりも、例外的に人数を問わず加入しなくてもいい業種がありますのでそちらを覚えておいたほうがいいでしょう。

健康保険・厚生年金に加入しなくてもいい事業所

適用事業所の逆で、加入しなくてもいいよという事業所のことを「任意適用事業所」といいます。

任意適用事業所とは、以下のものをいいます。

常時4人以下の従業員を使用する:個人経営の法定16業種
従業員を使用する人数を問わない個人経営農林水産・飲食・理美容・サービス・自由業

個人経営の農林水産・飲食・理美容・サービス・自由業は法定16業種にあたりませんので、従業員が何人いても加入は任意です。

では、加入したいなと従業員から申し出があった場合は1/2以上の同意があれば適用事業所となることができます。

令和4年10月から税理士や社会保険労務士などが運営するいわゆる士業の個人事務所も適用事業所に追加されることになっています。

適用事業所で働く従業員はすべて対象

先ほどは会社(事業主)側から加入するかどうかを見てきましたが、では従業員本人はどうなのか。

従業員は適用事業所に使用される人はすべて対象となります。

正社員・臨時社員・アルバイトなどすべて対象ですし、法人の代表者や常勤役員も対象となります。

しかし、適用事業所に勤務していても適用にならない「適用除外者」という従業員もいます。

適用除外者は健康保険や厚生年金から給付を受けられません。

適用除外者のうち主なものを挙げますと、

  • 日々雇用される
  • 臨時に2ヶ月以内の期間を定めて使用される
  • 季節的業務や臨時的業務に従事
  • 1週間の所定労働時間または1か月の所定労働時間の3/4未満(週40時間なら3/4の30時間未満)で、かつ特定適用事業所の短時間労働者に該当しない

この中で注目されているのは、最後の「特定適用事業所の短時間労働者」という言葉です。

短時間労働者ということは、パートさんなんかをイメージされるといいかもしれませんね。

短時間労働者とは、以下のすべてに該当する労働者をいいます。

  • 週20時間以上労働
  • 月額88,000円以上
  • 勤続して1年以上使用される見込み
  • 学生でない

特定適用事業所とは常時500人超を使用している適用事業所をいいます。

したがって、

特定適用事業所に雇用されている短時間労働者ならば健康保険や厚生年金に加入しなければならないことになります。

今後改正が予定されています

先ほど申し上げた短時間労働者の範囲は今後拡大されていくことになっています。

令和4年10月からは特定適用事業所の規模が常時500人から100人超へと変更されます。

さらに令和6年10月からは常時100人から常時50人超へと変更される予定です。

従業員規模が小さくなっているということは適用される短時間労働者がますます増えてくるということですね。

また、継続して1年以上使用される見込みという要件も、令和4年10月から1年以上から2ヶ月以上で要件を満たすことになります。

短期間でも加入を促したいという意図が見え隠れしますね。

まとめ

今回は、健康保険と厚生年金の加入するしないについて書いてみました。

改正が予定されていることもありますが、やっぱりポイントは社会保険加入もれ対策です。

社会保険に加入してもらって保険料を徴収したいという国の意図が反映されていますね。

社会保険に加入すれば事業所から従業員分を強制的に給与から天引きして納めてもらうことができますからね。

国民年金の納付はあくまで個人任せですのでどうしても未納になりやすいです。

社会保険料を納付させたいという意図があることを考えると、法改正が行われる動きも理解できるかもしれませんね。

では。

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