6月に入ると気になってくるのが、労働保険の年度更新申告書の提出です。
毎年7月10日までに提出することになっています。
(令和3年度については土日明けの月曜日である7月12日が期限となっています。)
また、同じ7月12日までに納付もしなければなりませんので、意外とタイトなスケジュールになっています。
まず手続き自体初めての方向けにどういった流れで申告書を作成していけばいいのかについて書いてみます。
「年度更新申告書」の作成と納付の全体像
労働保険の年度更新とは、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付をする手続きのことです。
イメージとしてはこんな感じ。
その時に使用するのが年度更新申告書で、確定保険料の支払いと概算保険料の支払いを1枚の申告書で行います。
年度更新申告書は労働者を雇っている事業所ですと、すでに用紙が送られてきているはずです。
では、申告書作成・納付までの全体像と私なりのポイントをまとめてみました。
それぞれのパートごとに補足説明をしてみますね。
準備 冊子と動画を見る・資料の準備
まず、送られてきている「申告書の書き方」という冊子があると思います。
(もしお手元になければ厚生労働省ホームページやお近くの労働基準監督署で入手できます。)
これが申告書の書き方の「冊子」です。
継続事業は、いわゆる1年間続く会社や事業所をイメージされるといいです。
ひととおり確認したら、次に何を確認して作成しなければならないかについてです。
賃金台帳
賃金額を集計するので、すべての労働者の賃金台帳(ボーナスが支給されていればそれも含みます)が必要です。
どこまでが賃金なのかというのは細かく規定されています。(「冊子」の14ページにもあります)
気を付けたいのは、給料・手当など名称問わず労働をした見返りにもらえるすべてのものが賃金です。
つまり、通勤手当や深夜手当・住宅手当なども賃金になります。
賃金は、令和2年4月1日から令和3年3月31日までに支払いが確定したものが対象ですので、実際に支払われていない場合でも賃金に含めます。
対象者の把握
労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称と思っていただければいいのですが、労災保険と雇用保険で対象となる労働者の範囲が異なります。
労災保険の場合は、基本的にすべての労働者が対象です。
一方、雇用保険は、勤務時間が短い場合(1週間の所定労働時間が20時間未満とか雇用見込みが30日未満である)や季節雇用者などは雇用保険の対象となりません。
その他、法人の役員の場合・同居家族の場合・出向労働者の場合などいろいろ細かく規定されています。(冊子の12~13ページにもあります)
つまり、労働保険の計算する際には、
- その月の労災保険対象者の人数と賃金額
- その月の雇用保険対象者の人数と賃金額
をそれぞれ集計していく必要があります。
作成・納付 「年度更新申告書計算支援ツール」を活用すべし!
申告書の作成にあたって、以下のような手順で作成していきます。
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確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表(以下、集計表)を作成
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申告書へ転記
1.の集計表は提出は不要で、申告書を作成したら事業主控えととともに保管しておくものです。
この集計表。もし電卓で手計算したらミスしそうな気がしませんか?
申告書へ転記するときに間違えたりしませんか?
そこで、厚生労働省ホームページには、「年度更新申告書計算支援ツール」(以下、支援ツール)というエクセルシートがあります。
入力することで自動計算と申告書の転記箇所が分かるようになっています。
この支援ツールを使って、集計表を完成させて申告書を作ったほうがミスは大きく減ります。
この支援ツールは「一括有期事業」版もあります。
厚生労働省ホームページ「厚生労働省各種様式」の下のほうに、「年度更新申告書計算支援ツール」がありますので、各自ダウンロードして使えます。https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/yousiki.html
では、申告書の作成方法としていくつかご紹介したいと思います。
方法① 申告書・納付書を紙で提出する
申告用紙にそのまま転記して作成するという方法です。
この時も、先ほどの「支援ツール」に入力をしておいてから転記することをおススメします。
検算をする手間が省けますし、資料として保管もしやすいかなと思います。
領収済通知書(以下、納付書)は書き間違えると使えなくなりますので、新たな納付書を管轄の労働局や労働基準監督署で入手します。
納付書以外は訂正ができます。訂正印も不要です。
方法② 申告書を電子申請にて提出・電子納付
申告書をe-Govホームページから電子申請にて提出し、電子納付をするという方法です。
この方法だと、24時間どこでも申告・納付をすることができます。
特にコロナの感染防止であまり外出したくない時期かもしれませんので、利用すべき方法かもしれませんね。
先ほど挙げた申告書の書き方「冊子」にも電子申請を大きくアピールしていますし、年度更新電子申請利用マニュアルもあります。
ただし、利用前には準備が必要です。
- 電子証明書を利用する場合:マイナンバーカード+カードリーダーが必要
- ID・パスワードを利用する場合:GビズIDを入手
この2つの方法のどちらかで行います。
マイナンバーカードを取得していない場合でも、GビズIDがあれば使えるので便利かなと思います。
電子納付は、金融機関のインターネットバンキングを利用します。
ただ、電子申請した場合でも電子納付を必ずしないといけないわけではなくて、紙の申告書についている納付書でも納付できます。
その場合は、金融機関へ納付書のみ持参します。
インターネットバンキングを利用していない場合は、申告書は電子申請で提出する・紙の納付書で金融機関で納付する、ということができます。
方法③ 給与計算ソフトから連携して申請・納付まで行う
一番簡単ですぐできるのは、普段お使いの給与計算ソフトなどからデータ連携させて申請し納付まで行う方法です。
「外部連携APIから電子申請をする方法」と呼ばれ、データの作成から申請などすべての機能をe-Govで操作をすることなくすべて完結できる方法です。
外部連携APIはいろいろありますけど、私が使っているSmartHRは利用できます。
ちなみに、freeeも電子申請できていたのですが終了が発表されています。

クラウドだと、税理士や社会保険労務士と共有することで代行していただけることもありますし、もちろんご自身で申告・納付もできます。
とにかく給与計算が終わればデータを連携すれば自動で申告書作成までできるので手間はかかりませんよね。
納付も電子納付すればいいわけです。
資本金1億円超の大法人などは電子申請が義務化されているので、今後は中小法人なども電子申請が主流になっていくでしょうね。
まとめ
今回は、タイムリーな話題として「労働保険の年度更新申告書」について書いてみました。
申告書の様式は、昨年度と異なっています(雇用保険分欄に変更があります)。
紙での提出はミスが起こりやすくなりますし、提出したりする手間を考えると電子申請・電子納付が一番やりやすいかなと思います。
では。
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