社会保険「算定基礎届」の作成方法

先日、労働保険の「年度更新申告書」の作成方法について書いてみましたが、ちょうど同じ時期に社会保険の「算定基礎届」も作成します。

提出期限も労働保険と同様に7月10日まで。(令和3年度は7月12日です)

「算定基礎届」はできれば早めに準備しておいたほうがいいかなと思います。

なぜなら提出できる期間が短いからです。

「算定基礎届」の提出期間は7月1日から10日まで

算定基礎届の提出期間は、7月1日から10日までの10日間しかありません。

ちょうどこのころは労働保険の年度更新と時期が重なります。

いざ7月に入って始めようと思ってもなかなか大変です。

以下、どうやって「算定基礎届」を作成していけばいいのか。

まず「算定基礎届」とは何か。

なぜ出すのかから説明してみたいと思います。

「算定基礎届」とはー保険料の元となる金額を決定

社会保険料は、本来は毎月支払われる給与から天引きして会社が納付するのですが、毎月の給与から天引きする手間が大変です。

なにせ給与は毎月変動するのが通常です。一定額というわけではありませんからね。

残業手当など、残業しなければつかない手当もありますし。

そこで、会社の事務の負担を減らすべく、

  • 7月1日現在で使用されているすべての従業員(被保険者といいます)に
  • 4月から6月までに支払った報酬(給与)を「算定基礎届」に記入し
  • 会社である事業主が届け出ます
  • その届出に基づいて厚生労働大臣が、毎年1回標準報酬月額を決めます

という方法を取ります。これを「定時決定」といいます。

この定時決定の時に作成する書類「算定基礎届」です。

「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則として1年間9月から翌年8月まで)の各月に適用されます。

これに基づいて納める保険料の計算や将来の年金額の計算が行われます。

ここで、「標準報酬月額」とは、4月から6月までに支給された報酬を平均し、一定の枠に当てはめた金額をいいます。

この標準報酬月額のもととなる報酬の平均額を求めるまでを「算定基礎届」で行う、と思っていただくといいかなと。

7月1日から10日までという短い期間に3か月分を計算しておく必要があります。

4月や5月なら計算はすでに終わっていると思うのですが、問題は6月。

6月の計算を早く終わらせておかないと、7月10日に間に合わないのでとてもバタバタしてしまいます。

「算定基礎届」を作成する前の準備

では、算定基礎届を作成する前にいくつか準備しておくことがあります。

これは私が準備しておいたほうがいいかなと思うことですので、すべてが必要というわけではありません。

準備 ①賃金台帳 4月から6月までに支払われたもの

4月から6月までに支払われた金額が分からないと届出自体が作成できません。

もし会社ですと給与や報酬として支給が行われるので、各個人別の賃金台帳を準備しておきます。

ここで、注意すべきは、あくまで4月から6月までに「支払われた」ものであるということです。

確定した月ではなくあくまで支払われた月で判断しますので、3月分を4月になって支払うようないわゆる「翌月払い」の場合は、3月分から5月分のものを集計します。

先ほども書きましたが、6月に支払ったものをいかに早く計算しておくかで、提出期間に間に合うかどうかが決まります。

準備 ②算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和3年度)

こちらは、会社(事業者)あてに算定基礎届とともに郵送されてきているかと思いますが、いわゆるパンフレットです。

これは必ず読んでおいたほうがいいと思います。

もしお手元になかったとしても、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/guide.pdf

準備 ③令和3年度算定基礎届事務説明の動画を見る

先ほどのガイドブックとともに、事前に説明動画を見ておくことをおススメします。

毎年行われている事務講習会は、コロナの影響で中止されています。

事務講習会の代わりとなるのが、このガイドブックと動画になります。

動画はこちらから視聴できます。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/santeisetsumei.html
【事業主の皆さまへ】令和3年度の算定基礎届の記入方法〔説明動画〕等について、というページからすべて確認することができますので参考にしてみてください。

「算定基礎届」作成にあたっての注意点

ガイドブックと動画を見ていただくと基本的なところの説明はされているかと思います。

特にガイドブックは詳しく書かれていますが、どこを注意すべきなのか焦点が合わせづらいのかなと思ったりします。

今回は注意点をまとめておこうかなと思います。

ページ番号はガイドブックのページ番号です。

提出期間と書類(P.1)

冒頭にも書きましたが、令和3年度については7月1日から12日までとなっており土日明けの月曜日が期限となっています。

また、令和3年度(今年)から算定基礎届総括表が廃止されているので提出不要です。

被保険者(P2.(3)提出の対象となる被保険者の範囲)

  • 5月19日現在の情報が届出に印刷されているので、印刷されていない場合は追加する
  • 退職している場合は、欄を斜線で抹消し、備考欄「9.その他」に「〇月×日退職」と記入する。また、資格喪失届を作成し提出する必要がある
  • 7月から9月までで月額変更が予定されている場合は、算定基礎届の報酬月額欄を記入せず空欄としたうえで、備考欄「3.月額変更予定」を〇で囲む
  • 電子申請の場合は、7月から9月までで月額変更が予定されている人の分を除外して作成する

報酬(P.3~4)

  • 賃金、給与、手当、賞与などの名称を問わない
  • 通勤手当も報酬に含まれる
  • 残業手当も報酬に含まれる
  • 通勤定期券は、6か月定期などまとめて支給される場合は、1か月あたりの額を算出して報酬とする(÷6をする)

支払基礎日数(P4~5) 支払対象となった日数

  • 月給制・週給制:歴日数(出勤日数ではない)⇒通常30日か31日(2月以外)
  • 時給制・日給制:出勤日数(有給休暇含む)
  • 給与計算の締め日と支払日の関係で支払基礎日数が異なる
⑩日数に書くのは支給日ではありません。
例えば4月25日に31日分を支給する場合、⑩日数には31と記入します。(25とは書かないこと!)

一般的な例(P5~18) 数字を確認したほうがわかりやすい

実際に数字を使った具体例を見ながら作成したほうがわかりやすいと思います。

パートタイマーの方の記入例や、途中入社の場合は注意しておきたいところです。

この届出の書き方も昨年と変更になっていますので、ガイドブックは必ず全体的に確認しておいたほうがいいでしょう。

よくある質問と回答(令和3年度)(P.23~)

ここも何か疑問に思ったことがあれば確認しておきましょう。

5月に受けた社会保険労務士向けの研修では、まだガイドブックはできていませんでしたが、ここの部分はすべて取り上げて説明していただきました。

それだけ注意すべきことが書かれているのだろうと思いますし、間違いも多いのでしょうね。

まとめ

すいまぜん。

ほぼガイドブックと動画を見てください、というような説明になってしまいましたが、まずはこの2つを見ておくことが重要だと考えます。

法改正があったりすると届出様式から変わったりしますし、我々社会保険労務士でもガイドブックと動画はチェックするようにしています。

もちろん電子申請も対応していまして、給与計算ソフトに連携させて提出することもできます。

短時間で作成して提出することになるので、何かとミスが起こりやすい書類なのかなと思いますのでチェックする時間も取れるくらいに準備しておいたほうがいいでしょうね。

では。

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