調査選定ー異常な数字・手書き・空欄多めには注意していた

税務調査の担当をしていたときに、上司である統括官とともに調査事案を選ぶ仕事をしていたことがあります。調査事案を選ぶことを「選定」と言います。

過去に提出された申告書の内容や資料を確認し、調査をしたほうがいいと思われるものを選んで統括官に見ていただく、ということをしていました。

もちろん最終的には統括官に判断をしてもらうのですが、そのうち何件かは実際に大きな事案(多額徴収や不正など)になっていきました。

そこで、私が申告書を確認するときに気をつけていたところと、これはちょっと怪しいなと思うような申告書について書いてみたいと思います。

申告書から明らかに誤りだとわかることは少ない

ごくたまに申告書を見た瞬間に、これは違うだろうと判断できることもあります。

例えば、転記ミス

明らかに違う数字が入ったまま所得を計算してしまっていて税額もそのまま計算し納付してしまっているケースです。

ただこれは税理士が関与していたり、会計ソフトなどを使って作成されていると起こることは少ないかなと。

法人税の申告書ですと、決算書と事業概況書を合わせて提出しますがその中身を見て明らかにおかしいと思うこともたまにあります。

申告書を確認しただけで何千万円もの誤りを見つけたこともあります。

ただそれらはかなりケアケースで、実際は申告書をパッと見ただけで間違いが明らかになることはあまりないと思います。

ただこれは怪しいなと思う申告書の特徴はいくつかあります。

怪しい申告書 ①異常な数字

申告書の内容を確認するときには、たいてい過去3~5期分の申告書の内容と見比べています。

申告書を見るときは売上や仕入れ、経費などの勘定科目やその内訳書にある金額を確認していくことになります。

ここでいう異常な数字というのは、

  • 過去まったく計上されていないのにいきなり今期に計上されている
  • 明らかに例年より多額に計上されている
  • 臨時的な費用(特別損失など)が多額

という感じです。

これらは主に経費(費用)として目につくものです。

もちろん売上を計上していないなら明らかにその金額が減っているのですがそれはほとんど見たことがありません。

売上を計上していないならずっと前からしていない可能性があるからです。

その年だけ計上しないということは普通しませんから。

しかし、経費(費用)は意外と操作されていることがあります。

特に、特別損失など臨時的な損失にいきなり多額に計上されていると中身を確認したくなりますね。

実際本当にその損失って経費(費用)にしていいのか、と。

損失に計上することができるかどうかを判断するためには証拠書類を確認したくなります。

計算した根拠を確認したいですし、何か意図を感じざるを得ないこともあります。

実際私が誤りを見つけたのは、この特別損失として本来は計上できないのに計上していたということでした。

ただまだ調査に行っていない段階ですのであくまで問題点の抽出です。

実際その後の法人や事業者・税理士とのやり取りで裏付けを進めていくことになります。

怪しい申告書 ②手書きの申告書

最近はずいぶん電子申告が提出されてきていますが、まだ一定数の手書き申告書を目にすることがあります。

税理士がわざわざ手書きして申告してくることもあります。

しかし、手書きの申告書の多くは金額の転記もれが非常に多いです。

合計金額が違うということもありますし、転記もれのまま税額まで計算してしまっていることもあります。

これは明らかに誤りだとわかってしまいます。

怪しい申告書 ③科目内訳書や概況書に空欄が目立つ

これは法人税の申告書でよくあることですが、決算書につける勘定科目内訳書があまりにも空欄が多くて怪しまれるということがあります。

取引先などの住所が不明であったり、金額が不明確である。

ある程度は仕方ないにせよやはり気になります。

事業概況書もほぼ空欄で提出される方もいらっしゃいますが、金額は入れておいたほうがいいです。

余計な疑念を与えてしまいます。

個人の確定申告書の決算書の下には「特記事項」という欄があって、この1年間の状況や変化を書く欄があると思います。

ここに書いておくことで、疑念をなくすことができます。

事業概況書も下のほうに「特記事項」を記載できるところがありますので、何か例年と異なる状況があるのなら書いておくことをおススメします。

調査選定は、問題点をどれだけ集めるか

調査の選定にあたっては、まだ実際調査に行っていないのであくまで誤りがあると思われるという想定で申告書の確認を行います。

問題点をどれだけ多く収集できるかにかかってくるのです。

もし誤りがないと想定されるのなら調査はないわけです。

もちろん審査をする人にもよりますけど、調査経験があれば想定することはさほど変わらないように感じます。

10人いれば8人くらいは「これは怪しいね」と判断できると思います。

やはり調査に行く限りは実績を残したいわけです。

誤りを多く見つけることも業務評価につながります。

そうすると事前に問題点をできるだけ多く見つけておくことで、誤りの発見率もあがっていくことになります。

まとめ

今回は調査を選定するときに気になる怪しい申告書について私が思いつくところを書いてみました。

異常値が見つかればその部分に関して必ず調査官から質問がされます。

そこで根拠のある説明ができればなんら問題はありません。

ちょっと怪しいなと思わせても、それについてちゃんとした説明ができたり証拠資料を提示できればいいのです。

ただ調査官はどこを確認してくるのか調査日当日にならないとわからないです。

しかし、調査を受ける側でも過去の申告書と比べてみてチェックする習慣はつけておいたほうがいいと思っています。

事前に疑いの目をつぶしておくことも大事です。

では。

[事務所お知らせ]

編集後記

高校の同級生が県内で社会保険労務士をやっているのですが、忙しいらしく手伝ってほしいと連絡が来ました。

事前に私もお手伝いできることがあればどんどんやっていきたいと思っていて、何か仕事があれば行くよと連絡を取っていました。

社会保険労務士業務のことで確認したいこともありましたのでちょうどいい機会です。

明日、事務所へ行って打ち合わせをしてきます。

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