税務職員として15年間勤務してきましたが、歳を重ねていくうちに魅力を見いだせなくなりました。
土日完全休み、まず退職させられることはない、一般の国家公務員より給与は高くやボーナスが出る、税理士を無試験で取得できる、などかなり優遇されているのですが。
税務職員として、仕事に真剣に取り組める環境が年々減ってきているような気がします。
目標を見いだせず、やる気がそがれることも。
年々税務の環境は厳しさを増し、ますます複雑になると思われます。
正直今のままだと、税務職員はさらに苦しむような気がしてならないのです。
少しでも魅力ある職場になってほしいな、と思っています。
現状の問題点を挙げてみる
再任用職員の増加
定年60歳を迎える職員は、退職するか再雇用かを選択することができ、最長で65歳まで勤務することができます。(再雇用のことを「再任用」といいます)
現在は、税理士開業することが厳しい状況であることから、ほとんど再任用を選択するそうです。
税務署長や国税局の幹部もしかり。
この、再任用職員の取り扱いが大変なのです。
申し訳ないですが、正直いないほうがいいなと思う方が多いです。。。
過去の経験を若手に伝えるということで再任用されるのですが、
若手が質問しても答えない、偉そうな態度を取る、すぐに怒る、武勇伝ばかりを一方的に話すなど、真剣に仕事に取り組む姿勢がないのです。
再任用職員は、幹部経験者であったとして現在は一調査官にすぎません。
しかし、幹部に文句を言ったり、自分の思う通りにならないと気が済まないのです。
さらに、ITや国際関係に弱く、一切そういう仕事をしないと公言される方も。
正直、周りの雰囲気は悪くなる一方で、組織もおかしな方向に。
古い体質がそのまま残ってしまい、パワハラ・セクハラが横行しています。
若手職員の大量採用
現在、国税専門官採用試験の採用予定人数は1,200人超。
私が採用されたときは750人ほどでしたから相当増えています。
税務職員は、大学卒業の国税専門官だけではなく、高校卒業程度の税務職員採用というのも行われていて、同様に近年大量採用されています。
そうすると、大量の若手職員が税務署に配属されることになります。
研修は数か月行われるものの、実務経験がないため一から教えることになります。書類の管理方法、パソコンの使い方も含め。
しかし、以前に採用された先輩方は人数が少ないため、若手職員を教える時間と余裕がないのです。
先輩方も自分の仕事でいっぱいなのです。
若手職員が仕事内容を聞けず放置されているところを何度も目撃しました。
また、若手職員も自分から聞いたり学ぼうとする姿勢はありません。
自分でマニュアルなどを読んでやってみるということは一切しません。
税務関係の書籍も買わない若手が増えました。
また、すぐ退職する若手職員も多いですね。仕方なく税務職員になったという話もよく聞きました。
組織内の雰囲気悪化
税務署の部門は一般的に役職順に、統括官・上席・調査官・事務官という順です。
事務官と調査官は40歳くらいまでの比較的若い方たちなのですが、上席以降は40歳から定年前の方までいます。
再任用職員もこの部門に含まれます。
実は、40歳から50歳くらいは採用を控えていたときなので、そもそも税務署にあまりおらずだいたいは国税局に人材が流出しています。
税務署に残っているこの年代は、病気持ちであったり子育て中や時短勤務の方が多いのですが、これらにも当てはまらない方がいます。
仕事は全くせず人に仕事をやらせる。仕事を振ると文句を言う。休暇取得に励む。酒とたばこ命。
定年間際のこういう方たちが特に多いです。
もうあと数年我慢すれば退職金がもらえるからと(本人談)。
定年前なので給与も相当な額が支給されているにも関わらず、自分の席にいないのです。
仕事はその人の分もやるように指示されます。
なぜか。その人にやらせても絶対終わらないから。
何度説明しても理解できないようで、だったら自分でやったほうが早いと思うのです。
こういう仕事しない定年間際の方・再任用職員への対応・若手職員の指導もあり、統括官と一部職員で部門を運営する状態。
やる気がなくなる一方です。
真面目な人ほど馬鹿を見る
一部職員だけで部門が回っている場合、真面目な人が一手に仕事を引き受けてしまっています。
そうすると、その人が他の部門からの対応をしなければならなくなり、相当な負担を強いられます。
残業はしないように指示があるため、早朝から出勤して昼休憩も減らして対応しています。
それで、体調不良を訴え休職され退職される方も多いです。
私は優秀ではありませんし病気持ちでしたが、けっこう仕事を振られてしまいました。
適当にあしらっていればよかったのかなと後悔していますが。
優秀な人材の流出が加速
私が入庁したころは、憧れの上司先輩がたくさんいました。
調査ができる人、税法に詳しい人、人間関係の構築ができる人、など。
同期にも同様にすごいなと思う人がいました。
しかし、その人たちはほぼ退職してしまいました。
定年までではなく早期退職です。
たいていもう自分で道を切り開いている方です。つまり税理士などで独立されています。
現在、国税通則法の改正で不服申立制度がずいぶん緩和されましたが、裁判や審査事例で税務署側の敗訴も多くなってきました。
外部の税理士や弁護士のほうが相当勉強されているように感じるので当然かなと。
海外税務もITも、ごく一部の職員しか詳しくありません。
優秀な人材がたくさん流出しています。
自分なりに思う改善策
ペーパレス化と簡素化
いまだに紙の書類がほとんどです。申告書も申請書もまだまだ紙が主流。
また、税務署からお送りする改正パンフレットや説明会案内などの文書もすべて紙。
今やネットも普及してきていますしもう不要な方も多いはず。
提出された申告書や申請書を封筒から取り出すところからすでにチェックリストがあります。
紛失することが一時期多かったので、差出人の名前と提出書類・返送先を記録し、職員2人によるチェックをすることになっています。
電子化したらこんなことしなくていいわけです。
特に確定申告期は、開封作業だけひたすらやっているアルバイトさんや職員もいるくらいです。
また、申告書を閉じておくファイルや申請書を、ある一定時期に綴じたり差し替える作業を何日もかけてやったりします。
チェックするにも紙で印刷してからしかできません。
かなり非効率です。
また、仕事での書類作成、特に調査にかかる資料作りはもっと簡素化したらいいのにと思います。
国税通則法の改正で、証拠保全の意味もあり書類の作成が増えました。
大事なところはきちんと作成すべきですが、あまり調査で意味のなさないところはカットしてもいいと思うのです。
すべて紙ファイルで管理すること自体もう時代に合わないのかなと。
もっと、IT活用して書類作成もチェックもやったらいいのにと思います。
「管理のための書類作成」ほど意味がないと思っています。
適材適所と部門運営を考えて
なぜこの人がこの部署にいるのか、がすごく多いです。
国税局や財務省に行くのは成績が優秀だから、という概念ももう捨てたらいいのになと。
こういう人たちが税務署へ転勤になることも十分あるようにしないと、人材難は解消されない気がします。
調査では部門単位で行動するのが基本です。
その部門に必ず調査に適した案件がない場合でも、数値目標が設定されている以上無理やり案件を探します。
もっと部門の垣根を越えて調査してもいいと思うし、他の署の案件も調査してもいいと思うのです。
調査では担当者の他、審理担当という法律的にチェックする部署にも調査書類を回付して見てもらいます。
この審理担当はほとんどの調査事案を一からチェックするわけです。
その割に人員配置が2人くらいしかいないのでもっと多くしてもいいのかなと。
そのためには、先ほど書いたぺーパレス化と簡素化が図られることが条件です。
組織の「縦割り」を考えて
税務署の組織は、総務課を除くと、管理運営部門・法人課税部門・個人課税部門・資産課税部門・徴収部門に分かれます。
この部門、名目上は連携することになっていますが、実際は連携していません。
打合せでもしょっちゅうもめるのです。
自分のことばかり主張するためです。
私も、他部門との交流は苦手でした。話がかみあわないのです。
でも、これから組織として対応していくには部門ごとに業務を分けていく必要もないのではと思うのです。
そもそも、管理運営部門は、他部署からの一部(窓口業務中心)を移管してできた部門ですが、正直もともとあった仕事の一部を切り離したために大混乱を招きました。
もとの部門で一括で対応したほうがよほど効率的だったと私は思っています。
もっと横断的に交流したり、もし縦割りのまま維持するのなら部門単位で業務を完結できるようにしたほうがいいなと思います。
嫌なことは嫌といえるように
飲み会の強要から、パラハラ・セクハラなど常態化しているのが大問題です。
残業も部署により何十時間にもなりますし、いまだに強制的な旅行など古い体質が残っているようです。
自分のライフスタイルを持って、嫌なことは嫌と言える職場になってほしいです。
やる気を持って
公務員だからか、業績に響くような目標はありません。
業務目標はあるにはありますが、人単位ではなく部門全体の目標です。
仕事しなくても給与は全額出ます。ボーナスも満額出ます。
もっと仕事する環境になってほしいなと。
それこそ、適材適所も考えることもそうですが、やる気を起こすような対策をもっと全体で考えてほしいなと思います。
仕事しない人にはボーナス減らすぐらいでもいいなと思ったり。。
まとめ
今回、かなり批判的なことを書いてしまいました。
でもそれだけ国税の職場に不満がありました。
だから、今いる職員の方たちに魅力のある職場なってほしいなと思い書きました。
おそらく国税の職場は税制度がある以上なくならないと思います。
でも、今のままだと人材がいなくなりそうです。
改善や解決策はもっとあるはずです。
では。
[事務所お知らせ]