年金相談で見かけた「租税条約に関する届出書」

先日、年金事務所で日本に一時帰国されているアメリカ在住の方がご相談に来られました。

内容は、日本で支払われる年金について生計維持関係ハガキを出すのと租税条約に関する届出書を出すために内容を確認してほしいのとのことでした。

まさかこの場所で年金に関する租税条約に関する届出書を見かけることになるとは。

租税条約に関する届出書とは

租税条約とは、日本とほかの国との間で所得税が二重課税になることを防止する目的で、日本で支払う所得税分を免税(軽減)するために届出書を税務署に提出します。

日本で支払われた年金を受け取った非居住者は、

  • 年金の支払いを受ける者に関する事項
  • 租税条約に関する届出書

を提出することになります。

さらに、アメリカに住む居住者はこの届出書のほかに、特典条項に関する付表(様式17)と居住者証明書(Form6166)も必要になります。

通常、年金に限らず報酬や使用料・配当などをアメリカに住む非居住者に支払う場合は、

  • 租税条約に関する届出書
  • 特典条項に関する付表(様式17)
  • 居住者証明書(Form6166)

という3点セットが必要です。

【事務所お知らせ】  

対象となる支払金額

租税条約に関する届出書を提出する場合は、日本における年金支給額で所得税が源泉徴収される金額があることが必要です。

つまり、年金支給額が、

  • 65歳未満:月額5万円以上(令和2年1月1日以前は6万円)
  • 65歳以上:月額9.5万円以上(令和2年1月1日以前は10万円)

であれば、租税条約に関する届出書など3点セットが必要になるというわけです。

一方で、源泉徴収されない金額(65歳未満で月額6万円未満、65歳以上で月額10万円未満)の場合は、租税条約に関する届出書は必要ありません。

ただし、年金事務所では以下の書類を記載して提出していただくことになっているようです。

  • 年金の支払いを受ける者に関する事項
  • 添付書類の省略について

年金の支払いを受ける者に関する事項

年金の支払いを受ける者に関する事項とは、基礎年金番号や生年月日、受取金融機関名などの事項を記入していただく書類です。

ただしこの種類は任意様式となっており必要事項が記載されていれば様式は問いません。

氏名欄は海外に送金する際の口座名義を記入します。

住所は、郵便物が必ず届く場所にします。記入の仕方は、番地・都市名・州名・国名の順です。

記入はアルファベット大文字で書くことと、銀行名・口座番号の確認できるものを添付することになっています。

年金支給用の「租税条約に関する届出書」

租税条約に関する届出書は、報酬や使用料・配当などの支払う種類によって様式が異なっています。

年金用の様式(様式9)も当然にありまして、年金事務所に行けば備え付けられています。

年金事務所でもらえる「租税条約に関する届出書」はすでに支払者欄は印字がされていますので、受取者である非居住者の氏名などを記入していただければOKです。

特典条項に関する付表も個人の方は氏名を記入していただきます。

居住者証明書は、原本が必要です。

アメリカIRS(内国歳入庁)に申請をし発行してもらう必要があります。

発行までに時間がかかるとされていますので余裕を持った申請が必要になります。

年金の場合もほかの支払と同じ手続き

日本の年金を非居住者が受け取る場合に別途新たな書類が必要なのか、手続き関係が複雑になるのかなど心配をしていましたが、ほかの支払と流れは基本的に同じです。

結局、租税条約を締結している国に支払いをして所得税が源泉徴収されるのなら租税条約に関する届出書を出すと免税(軽減)になるということ。

さらにアメリカなど一定の国では、特典条項に関する付表と居住者証明書が必要になるということ。

なので相談を受けた直後は緊張していましたけど、届出書自体は税務署内でも審査をしていましたので特に心配することもありませんでした。

また提出そのものは非居住者本人が日本年金機構に直接郵送にて提出していただくことになりますので窓口で書類を受け付けるわけではありません。

まとめ

職員の方に聞いたらごくまれに来られるそうです。

「租税条約に関する届出書自体は税務書類だから見たことあるでしょ!」って笑われましたけどね。

なので届出書本体の詳細なことは窓口ではお答えせず税務署や提出先である日本年金機構に問い合わせてもらっているようです。

では。

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