雇用保険の失業給付をもらうと年金が止まります

ここ最近、年金相談に入るとほぼ質問されるのが失業給付をもらうと年金が止まるとケースです。

ネットやTVで報道されることもあるので耳にされている方も多いようです。

制度の仕組みと一般的に有利とされる受取り方や注意点について書いてみようと思います。

【事務所お知らせ】  

失業給付と厚生年金の調整

今回支給に影響があるのは、年金の中でも65歳前の厚生年金についてです。

現在、60歳~65歳になるまでの間で生年月日に応じて「特別支給の厚生年金」を受け取ることができます。

65歳になると、特別支給の厚生年金の権利がなくなり、本来の厚生年金と基礎年金の2階建てになります。

失業給付とは、退職後ハローワークで休職の申し込みをしたら、雇用保険に加入した期間に応じて一定の日数分の給付を受けることができます。

一般の方でしたら、

  • 1年以上10年未満の加入期間:90日分
  • 10年以上20年未満の加入期間:120日分
  • 20年以上の加入期間:150日分

です。

今回のお話は、65歳になるまでの特別支給の厚生年金と失業給付は両方受けることができず失業給付をもらっている間は厚生年金が止まる、という制度です。

具体的には、求職の申込みをした月の翌月から、受け取る期間が経過(退職日の翌日から1年間)または日数分の給付を受け終わった月まで年金が止まります。

日本年金機構  老齢年金ガイド 令和5年度版 より

ちなみに、この図で言う9月はハローワークで失業認定を受けなかったため失業給付を受けなかった場合で、厚生年金は支給されます。

ここでのポイントは、

65歳になるまでの特別支給の厚生年金と失業給付は両方受けることができない
ということは、以下のように言い替えることもできます。
65歳以降に受け取る本来の厚生年金と失業給付なら両方受け取ることができる
というわけです。

65歳前後で有利な退職の仕方

ご相談内容の多くは、特別支給の厚生年金と失業給付を両方もらいたい、ということです。

実際どんな形で退職したら両方もらえて有利になるのでしょうか。

以下は一般的に考えられている方法について書いてみます。

65歳前に退職

まず、失業給付は、65歳到達日前に退職すれば権利がもらえます。

65歳到達日は「誕生日の前日」になりますので、65歳到達日前=「誕生日の前々日」までに退職すればいいということです。

例えば、65歳の誕生日が9月4日なら9月2日までに退職をするということです。

65歳を過ぎてから求職の申込み手続き

求職の申込みは65歳以降になっても問題はありません。

求職の申込みをして待機期間の後に指定された日にハローワークに行って失業の認定を受けたら失業給付が受け取れます。

65歳到達前に退職し、65歳以降に求職の申込みを行い失業給付を受け取ることとすれば、厚生年金との調整は全く行われません。

ただ注意したいのは、求職の申込みをして日数分の給付を受け終わるまでの期間が、退職日の翌日から1年間と決められています。

例えば、失業給付を150日受けられる人が、120日受けた段階で退職日の翌日から1年を経過してしまったら、残りの30日分は受け取ることができず終了となります。

65歳以降の退職

では、退職日が65歳到達日以降になった場合には、高年齢求職者給付金が受け取れます。

これは、雇用保険に1年以上加入で50日分であり一時に受け取ることになります。

年金との調整はありませんが、失業給付のほうが最低でも90日分ありますから有利です。

注意点

失業給付と年金との関係については、一般的に64歳11か月で退職して65歳を過ぎてから求職の申込みをしたら年金が止まることはない、という説明をしたりします。

しかし、雇用契約において65歳時点で満了する際、満了まで在職したら賞与や退職金が支給される場合もあるかと思います。

その際に、賞与や退職金をもらえば生活資金も増えますのであえて失業給付にこだわらないほうがいい場合もあります。

まとめ

今回は雇用保険の失業給付と年金との調整について解説してみました。

先日、ハローワークで「失業給付もらったら必ず年金が止まる」という説明を受けたお客様が混乱されているケースがありました。

説明が食い違っている場合もあるようなので、こちら側がしっかりと対応すればお客様も不安にならずに済むのかなと思います。

私ももっと勉強します。

では。

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