準備調査は大切

税務署が税務調査を行うときには、調査官は事前に下準備をしてから調査に臨みます。

この下準備を「準備調査」といいます。

準備調査をきちんとやっておくことで、調査を効率的に行うことができ、結果的に調査を早期に終了することができるようになります。

これが調査の大半を占めるのではないかと思います。

実際、私が調査官の時にやっていた準備調査について書いてみます。

準備調査でやっていたこと

まず、統括官から調査に行く会社などの指令を受けます。

事前にこういうところを見てきてくれと指示される統括官もいますが、そうでない方のほうが多い気がします。

次に以下のことをしました。

*法人税調査の場合を前提としています。

届出書や申請書の内容確認

事前に会社などから提出されている設立届出書や異動届出書・消費税簡易課税選択届出書・源泉所得税納期の特例に関する承認申請書などを確認します。

会社がどういう状況なのかを把握します。代表者が変更になっていないか、決算期が変更されていないかを確認します。

特に、課税方法(原則課税か簡易課税か)についてよく確認しておきます。

事業概況書を確認する

①と同時にやることですが、会社や税理士が提出する事業概況書もチェックします。

消費税の経理方法はこの書類で把握しますし、従業員の人数やホームページの有無、海外取引の有無、源泉所得税の納付状況も把握します。

事業概況書に書かれてあることで、税務調査の開始時に質問する内容を絞ることができます。

申告書を出すときに事業概況書を提出していただいているのに、また消費税の経理方法はなんて聞かれるとイラっとしますよね。

一応は確認で聞くこともあったりはしますが、事前に分かることは理解してメモを取っておき改めて質問しないようにします。

申告書や納付状況の内容を5期分(3期分とか調査の内容によります)入力し比較検討する。

申告書は別表から始まり、貸借対照表や損益計算書などの決算書や勘定科目内訳書も併せて提出されています。

ここでは、決算書の内容を調査年から遡ってExcelなどに入力し比較して、異常値がないか確認します。

例えば、前年より売上が増加しているのに所得がそんなに変わらないのは、経費が増えている。

その経費が増えた原因は何かを確認して、その経費性が認められるかを問題視してメモしておきます。

異常値があると絶対に質問事項として挙げられます。

また、申告書の別表から変な金額が計上されていないかもチェックします。

意外と別表の記載誤りや、適用要件誤りで事前に修正事項があることもあります。

あと、勘定科目内訳書の内容も入力します。例年にない取引先があったり、倉庫や事務所の所在地や、取引先が外国であったりするとチェックしメモしておきます。

源泉所得税の納付状況も、海外取引があると特に納付もれが発生しやすいのでチェックしておきます。

取引資料や過去の調査資料を見ておく

他の人が調査に行ったりしたときに収集した取引先が、今回の調査法人と関係がある場合に、取引内容を確認して計上額が正しいか確認します。

例えば、取引先では経費として計上しているにもかかわらず、調査法人では売上として計上されていない場合、売上計上がもれていたり意図的に計上されていないことが想定されます。

また、過去に同じ会社で調査があった場合に、その時会社の経理担当や税理士が言ったことや調査の経緯を確認するために、過去の調査資料を見ておきます。

今回も同じような問題点が出ていないかもチェックします。

問題となりそうな部分を抽出し、事前に想定される問題点を整理しておく

最終的に、問題点を整理して調査に臨みます。

調査の際には、事前に原則会社と税理士に調査に予約の電話をしますので、調査場所と日時を確認して、その場所の地図や食事場所、電車・バス等の交通機関の確認をしておきます。

そして、調査当日まで、①~⑤を順次繰り返しながらシミュレーションしていきます。

事前調査ができていないと調査が失敗することも

調査官は、いくつもの会社などを同時並行で調査するために、事前準備に十分な時間をかけられないことがあります。

調査が終了するときは書類をまとめなければなりませんし、一方で調査が始まるときは資料を準備していかなければなりません。

思考を切り替えていかなければなりません。

だた、この事前調査ができないときは、たいてい調査は失敗に終わります。

自分の中で十分に事案検討していないため、的外れの調査しかできなくなるのです。

帰ってきて、上司に報告することすらできなくなってしまいます。

私も何度となく失敗してきました。

もっと準備調査に時間をかけられたら、と後悔する調査も多くありました。

まとめ

事前調査は必ずやっていて、問題点の絞り込みをしてから調査官はやってきます。

そうしないと効率的に年何十件も調査はできません。

正直、事前調査を十分にやらなくてもいいという調査官もいますけどね。

ただ、私はこの事前調査をしっかりやったことで、早期に調査を終わらせることができたことが多いですし、

事前調査でおかしいなと思ったことが、大きな不正に結びついていたこともありました。

ただ、会社側としては、調査官から出る質問や問題点について、きちんと説明したり証拠書類を提示できれば大丈夫です。

調査官は事前に色々調べてきますが、まずは税理士に相談してしっかりと対応することだと思います。

では。

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