最近ある農家の消費税の申告書を作成する機会がありました。
開業間もなくインボイス登録をしたあとで高額特定資産を買った場合には注意したいことがあります。
開業間もない・インボイス登録したばかり
今回の例は、今後ビニールハウスで室温野菜を育てていくという農家を想定したお話です。
JAだけではなくスーパーや産直に卸す予定なのでインボイス登録をしています。
しかし、開業間もないことから売上はほぼなく、ビニールハウスを買うためにかかったお金は減価償却資産となり一括で経費にできません。
消費税法では、
を計算するのですが、仕入れや経費の範囲は広く減価償却資産も含めます。
つまり、ビニールハウスを買うためにかかった消費税は仕入れ・経費にかかった消費税に含まれます。
そのため、
となることから、納めるのではなく還付を受けることができます。
これを「本則(原則)課税」といったりして一般的な消費税の計算方法となります。
インボイス登録をしますと、その日以後は売上の有無にかかわらず消費税の申告が必要となります。
農家は個人事業主ですから、例えばインボイス登録をしたのが2月1日だったら2月1日から12月31日までの売上や経費に含まれる消費税を計算して申告を行います。
【事務所お知らせ】高額特定資産の判定と消費税の計算の制限
今回、消費税の申告にあたって気をつけないといけないのが高額特定資産を買った時の対応です。
ビニールハウスでも大型のものは1,000万円を軽く超えてしまいますので、高額特定資産にあたります。
インボイス登録後に高額特定資産を買って消費税の計算方法として本則課税を適用するとします。
もしインボイス登録前に高額特定資産を買ってしまうと消費税の計算に含めることができません。
まだ開業して間もない場合、売上に係る消費税よりも仕入や経費・高額特定資産に含まれる消費税のほうが大きくなりますので消費税の還付を受けたいわけです。
還付を受けるために本則課税を選択した場合、その年から3年間は本則課税のままいなければなりません。
ただし、令和9年中に届出を出すことにより簡易課税を選択することができますし、令和8年中の売上が1,000万円以下であればインボイス登録した免税事業者となります。
インボイス登録をしている免税事業者は令和10年から3割特例を選択できることとなります。

消費税の申告の注意点
もし令和7年中にインボイス登録をしてその後高額特定資産を買った場合には、令和9年までの3年間は本則課税で計算をしなければなりません。
本則課税は、
で計算をするので、令和7年は還付になるはずです。
しかし、令和8年になり生産が本格的に始まりますと売上が増えてくるわけです。
また、高額特定資産を買ったときには消費税の計算に含めますけどその後は一切含めません。
通常は減価償却という計算を通じて経費にできますけどそれは所得税のお話。
消費税には減価償却という計算はなく、あくまで買った時にしか消費税を入れることができません。
そのため、令和8年以降は仕入や経費に含まれる消費税が一気に少なくなることが考えられます。
一般的に農家の方は簡易課税といって一定率をかけて消費税を計算するほうが有利になるとされています。
特に、食料品を作る農家の場合には、簡易課税の「第2種事業」として売上に含まれている消費税の20%を納めたらいい、ということになっています。
言い換えると、仕入や経費に含まれている消費税が80%あるとみなしてくれるんです。
仕入や経費に含まれている消費税が80%もあることは通常ないはずなので簡易課税のほうが有利になります。
また、本則課税はどれが消費税を含んだ取引か自分で判断していかなければなりません。
簡易課税では、売上に含まれている消費税さえ計算できれば仕入れや経費に含まれている経費を一切計算せずにダイレクトに消費税を計算できます。
今回の場合、令和7年は本則課税により消費税の還付を受けられるものの、令和8年と令和9年は本則課税でしかも納税額が多くなることが予想されます。
その点をお客様が理解したうえで手続きをされるかどうか確認をしたほうがいいでしょうね。
まとめ
農家の方が今後大きな設備投資を考えている場合、
- インボイス登録後であること(*開業間もない場合)
- 高額特定資産にあたるかどうか
- 3年間は本則課税のままいなければならない
- 本則課税の消費税計算(課否判定が難しい)
この辺あたりは確認しておいたほうがいいでしょうね。
実際、お客様もそこまで考えていなかったみたいです。
私も相談を受けてからこの判断ミスは怖いかも…と思ってしまったので書いてみた次第です。
では。
