兼業税理士&社会保険労務士の労働・社会保険について考える

これから開業するにあたり、家業の従業員として勤務しながら税理士&社会保険労務士として活動する予定です。

いわゆる「兼業」です。

今働き方改革が提唱されていて副業・兼業を認める方針が示されています。

それにともなって厚生労働省ではガイドラインが示されて、労働時間管理や安全健康管理のルールが明確にされています。

今回は兼業・副業した場合の労働保険と社会保険について書いてみたいと思います。

「副業と兼業」について
法的な定義はなく2つの線引きもあいまいです。
一般的に、
副業:本業を主体として労力や時間の大半を本業に費やしている
兼業:本業以外の事業を同時にいくつか掛け持ちして本業と同程度の労力で行う
と区別されているようです。
ちなみに、私の場合兼業のほうが合っているかなと思うので以下、「兼業」という言葉で書いています。
今回の記事は時間をかけて調べながら書いてみましたが、個人的な見解も入っています。ご了解ください。
人事労務の仕事便利帳「コラム:副業・兼業の促進に関するガイドライン」より引用・加筆しております。

兼業の現状と会社での対応について

兼業を希望する人は年々増えてきています。収入を増やしたいとか能力を活かしたいなど様々な理由があります。

また、正社員・アルバイト・役員・個人事業主など様々な形態や立場で働いているのが通常です。

裁判例では、

労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的に労働者の自由である

とあり、会社などは兼業を認めることが適当だと考えられています。

しかしどこまで兼業を認めるのか、会社で兼業を禁止したり制限したりすることも出てくるでしょう。

例えば、以下のような場合は禁止したり制限したほうがいいと考えられています。

  • 業務に支障が出る場合
  • 秘密事項が漏洩する場合
  • 同業他社との競合で自社の利益が害される場合
  • 会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

ここで、会社はどうやって対応すべきなのかについてです。

会社側で従業員が兼業していることを確認するには、基本的に従業員からの自己申告が基本となります。

自己申告したことによって会社側は不利益な取り扱いをしてはなりません。

そこで、会社側が作成している就業規則に従業員が兼業する際は届出が必要であることを定めるとか、兼業内容や時間を確認できる仕組みを作っておくことが必要です。

それとともに働き方について会社側と従業員側で双方に納得しておくことが大切です。

特にここで問題となるのは、「労働時間管理」と「健康管理」についてです。

兼業することによってこれらの取り扱いはどうなるのか。

労働時間管理と健康管理

労働基準法には労働時間について以下の取り扱いがあります。

労働時間は、事業場を異にする(=別会社に勤務する)場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算(=合計)する。

つまり、Aという会社に勤務する従業員がBという別の会社に勤務している場合は、労働時間は合計される、ということです。

法定労働時間は、休憩時間を除き1日8時間と定められています。

もし、Aという会社で1日8時間勤務し、その日のうちにBという会社で1日2時間勤務した場合、合計で10時間勤務したということになります。

そのため、法定労働時間である8時間を超えた2時間分の残業代(割増賃金)が発生することになります。

ここで、割増賃金を支払うのは、法定労働時間外(時間外)労働をさせる原因を作った会社が支払うのが基本ですので、今回ですとB会社となってしまいます。

しかしこう取り扱うとB会社としてはちょっと困ってしまいますよね。

A会社で働いた時間が分からなければ時間外となった勤務時間が分かりません。

そこで、時間管理をあらかじめ従業員と本業先(A会社)・兼業先(B会社)との間で労働時間の上限を決めておきます。

(具体的には上限の合計が月100時間未満、複数月平均80時間以内。)

そうすることで他の会社での実労働時間を把握することがなくても労働基準法を守ることができます。

ただし、この労働時間の通算ですが、労働基準法が適用されない人は除かれています。

労働基準法が適用されない人として、個人事業主やフリーランス、コンサルタントなどが挙げられます。

会社との間で雇用関係はなく、独立関係にある人と考えていただくといいでしょう。

また、会社は従業員が兼業をしているしていないにかかわらず、健康診断や長時間労働者に対する面接指導やストレスチェックなどを実施しなければなりません。

兼業を認めている場合、時間外労働の上限規制を超えない範囲で労働時間を決める、健康管理を従業員に指示し不調の際は相談するように伝えておきます。

従業員と個人事業主(税理士&社会保険労務士)を兼業する場合の労働保険・社会保険

では、私のような会社の従業員をしつつ税理士&社会保険労務士という個人事業主と兼業する場合、労働保険と社会保険はどうなるのか。

労働保険については、生計を主とする雇用関係にある会社側でのみ保険料を払う必要があります。

 

また、社会保険については新たな手続きは不要で、会社員として加入している社会保険をそのまま利用できます。

会社の従業員としての収入と、個人事業主としての事業収入には関係がありません。

したがって、社会保険料の計算も変わらないために負担が増えることもありませんし、健康保険証もそのまま使えます。

ただし、単に個人事業主としてのみ働くときは、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。

従業員と別会社の従業員を兼業(会社をかけもち)する場合は注意しよう

一方、従業員として本業とそれ以外に雇用契約を結んで別の会社の従業員となる場合(会社をかけもちする)は注意が必要です。

別会社の従業員となるということは、基本的にその会社でも社会保険料を負担する必要が出てきます。

その場合は、従業員が年金事務所に主となる会社などを届け出る手続きが必要です。

「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」という書類を作成して届出をします。

そして、主となる会社または年金事務所において、各会社の報酬月額を合算して標準報酬月額が算定され保険料が決定します。

その後、各会社は従業員の報酬の額により按分した保険料を、選択した年金事務所へ納付することになります。

つまり、兼業として働く会社分の給与も社会保険の算出額に含まれるため、給与が増えた分の社会保険を負担する必要が出てきますので注意です。

会社側もこの届出自体を忘れてしまうことも多く、もし出していなければ保険料自体少なく計算されていることになります。

まとめ

今回は、兼業についての労働保険と社会保険ついて書いてみましたが、自分でも正直説明が難しいなと思ってしまいました。

簡単にまとめるとこんな感じです。

〇兼業をするときは労働時間と健康管理に注意する
〇労働保険は基本的に主として雇用されている会社でのみ負担する
〇社会保険の取扱い
・従業員と個人事業主:新たな手続きなし。社会保険料の負担も変わらない。
・従業員と別会社の従業員を兼業:手続き必要。社会保険料の負担が増える。
自分自身も今後兼業となるのですが、「あれ?兼業の場合の労働保険と社会保険はどうなるんだっけ?」とふと思ってしまったのでいろいろと調べて書いてみました。
正直この兼業についてはこれからもっと取り扱いが変わってくることがあるかもしれません。
もし間違っていたらご連絡ください。
私自身もっと勉強してみたい分野のひとつです。
では。
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