税務職員の研修

税務職員には能力向上のために、新人職員からベテラン職員まで研修制度が設けられています。

その中で、大卒程度の国税専門官採用試験で採用された税務職員が受ける研修として、「専門官基礎研修」と「専科研修」というものがあります。

私の時は、採用されてからすぐ3か月間「専門官基礎研修(以下、基礎研)」、その後税務署に配属されてから実務経験1年後の8月から翌年2月末まで「専科研修(以下、専科)」を受けました。

今現在は、採用されてから3か月間の基礎研は同じですが、専科に関しては税務署に配属されてから実務経験3年後に受けています。

これら2つの研修は任意ではなく強制で、埼玉県の和光市にある税務大学校和光校舎で行われます。

そこで、今回は研修のことについて書きたいと思います。

*私が経験した研修と今は異なっているところがあります。

最近研修制度が変わっているためです。

基礎研でやること

4月1日に入庁してすぐこの研修が始まります。

全国各地の国税局で採用された新人職員が一同に介します。

私の時は、採用試験受験時22歳から28歳まで(今は30歳まで)の750人でした。

名札に研修生番号と班が書かれていました。研修生を班に分けて班単位で行動をともにします。

この班は全国の国税局の新人職員が割り振られており、北は北海道から南は沖縄までいろいろな研修生と話ができそうだったのでうれしかったですね。

その研修生を指導するのが、税務署や国税局で幹部経験のある「教授」と呼ばれる職員の方です。

教授も全国の国税局から来られており、私はたまたま東京国税局の資産課税部門の教授でした。

この研修を通じて、新人職員としてのふるまい方や税法の基礎知識を身に着けていき、研修が終了する少し前に自分の配属する系統(法人・個人・資産・徴収)と税務署が決まりました。

研修生としての一日はこんな感じです。

8:30 班ごとに教室で出席確認
9:00~12:00 税法や簿記の授業・たまに外部の人のお話を聞く
12:00~12:45 昼食
13:00~16:45 税法や簿記の授業・班でのミーティング
~17:00 班ごと教室で連絡事項で終了

17時で終了ですし残業はありません。楽だなー。と思ったのですが。

この税法や簿記の授業、けっこう大変なのです。

委員としての活動が大変

簿記の知識は税務職員にとって必須です。

私は研修前にすでに日商簿記1級を取得していました。

初日に教授から「簿記委員」として研修生のサポートをしてほしいとお願いされました。

この基礎研では研修生全員が日商簿記2級以上の取得を目指します。

研修時に日商簿記2級を取っていない人は、4月から6月の検定合格を目指し詰め込みで猛勉強することになります。

日商簿記2級を取得した人は、民法を勉強してました。

班には半分程度2級未取得者がいましたので、その指導係として簿記委員が置かれます。

簿記の授業の補足や検定に合格するための模擬試験の作成など。

各班ごとに1名ずつ簿記委員が置かれ、全員で集まって相談しながら運営するのです。

簿記委員でも、会計士試験合格者や税理士合格者がいる一方で、日商簿記2級合格してかなりたっている人もいました。

班に簿記の詳しい人がいないので仕方なくやっている人もいて、簿記の詳しい人に委員の仕事が集中していました。

私もこの簿記の詳しい人の仲間に入ってしまったので、17時以降も研修所に残って20時過ぎまで資料作り等をしていましたね。

税法の勉強をする時間が取れない

税法は、基礎的な内容を所得税や法人税など国税を全て勉強していきます。

系統が決まるとそれからは専門の税法を詳しく学ぶような感じです。

税法は教授による講義が行われ、定期的にテストが行われます。

勉強しておかないと教授から呼び出されます。

簿記以外ほぼ税法は知らなかったのでとにかく勉強したかったのですが、簿記委員の集まりや資料作成で帰宅するとほぼ勉強時間が取れず苦労しました。

7時前に出勤して班の教室で勉強したこともありましたね。

しかし、こんな大変さまったく苦になりませんでした。

それは他の研修生との出会いです。

同期と出会い楽しい日々

班では25人前後くらいの研修生と日々過ごすので、みんなでたわいもないことを話したり、全国各地から集まるので郷土の話で盛り上がることも。

研修後頻繁に飲み会を開いたり、旅行へ行ったり。

研修終了前は、みんなと別れるのが辛いので、毎日行事を作って出かけていました。

教授からは、基礎研はまず勉強よりも気の合う同期とたくさん出会いなさい、とおっしゃっていました。

また、私の場合は簿記委員もしていましたので、そのつながりでもたくさんの同期と知り合うことができました。

いまでも、すごく大切な仲間です。

専科でやること

基礎研終了後、税務署に配属されてから1年間税務調査と内部事務を経験してから専科研修がはじまります。

7か月という長い研修で、この研修が実はかなり厳しいのです。

日商簿記1級レベルの簿記の授業、班ごとでゼミ形式による討論を行う、テストの成績が勤務評価につながってくる、など。

専科研修から、各系統に細分化されます。私は法人課税だったので、法人系統の班にいました。

また簿記委員に

基礎研の時と違う教授なのですが、基礎研のときに簿記委員をしていた情報があったので、当然に簿記委員をやるように言われました。

しかし、今回の簿記委員はちょっと違いました。

簿記のレベルは日商簿記1級程度、財務諸表論も授業がありテストもあります。

しかも外部から来た講師が教えるため、教授ですらテスト対策ができないのです。

専科では成績が一定以下だと不合格で、追試や最悪の場合卒業できないことになり配属先の税務署にその話が行き仕事がしずらくなります。

毎年簿記や財務諸表論で数十人が不合格になっている状況でした。

将来も左右しかねないので、教授から全員を一発で合格させるようにと指示されたのです。

そんな無茶なと思いましたが、周りが助けてくれるだろうと思い引き受けました。

基礎研と同様に、授業の補足やプリントの作成・模擬試験の作成や解説など、平日研修終了後毎日残ってやってました。

これだけだとまだよかったんですけど。。。

ゼミ形式の討論の準備

税法の内容、法人系統ですと法人税・消費税・源泉所得税について、座学だけではなくある事例を用いて班で討論させる「ゼミ」という授業がありました。

班をさらに細分化し、発表・質問・記録などに分けて午後半分や1日にわたって討論します。

この発表、事例が配られてから資料を作成し報告書を作るのですが、討論になるような複雑な事例で答えがあってないようなものですので時間がとにかくかかるのです。

みんなで文献や条文・判例などを駆使して回答を作るのです。

これを作れるのは研修終了後17時以降。

研修所は22時で閉館でしたが、いつも閉館ぎりぎりまでいて、土日休みも関係なく集まって回答を考えていましたね。

さらに、追い打ちをかけるものが。。

研修での成績が勤務評価につながる

成績が一定以下だと卒業できないというのがあるのですが、

研修の成績順に「A・B+・B・C」と4ランクに分けられ、さらにAのうち上位成績者は通称「金時計」と呼ばれます。

金時計やAの一部は給与が早く昇給したり、希望の人事がかなうなど勤務評価がよいという判断がされます。

できれば、成績は少しでもよいほうがいいと思いますよね。

成績は、税法や民法・会社法・簿記・財務諸表論のテスト、ゼミの貢献度も含め総合的に判断されます。

つまり、テストでよい成績も取らなければならず勉強しなければならないのです。

研修生全員、そのことを知っていますし、過去に先輩などが金時計だったなどという話を聞くので、周りがみんな目の色を変えて勉強するのです。

平日研修終了後寝るまで、土日も研修所で勉強のような。

私は、簿記委員をする段階で教授からは金時計は諦めてくれと言われていましたし、簿記委員の仕事
に費やす時間が多くて勉強できないなと思っていました。

ただ、やはり少しでもよい成績をと思い、

平日研修終了後30分はその日の復習をする

足りない時間は休日研修所で1日勉強する

そう決めて過ごしていました。

夜22時閉館まで研修所にいて23時帰宅、朝6時半出勤を続けていましたね。

大変でしたけど、簿記委員で教える楽しさ、税法を勉強する時間がたくさん持てたことはすごくよかったです。

また、基礎研とはまた違う同期と交流ができました。

同じ系統の同期、実際の職場でこういうことがあったとか上司の愚痴を言いあったり、将来について語り合ったりすることもありました。

こういうつながりは退職するまでずっと続きました。

退職して税理士になってしまうと、税務職員との癒着問題があるのでなかなか会えなくなってしまうので寂しいところですが。

まとめ

今回は、国税専門官採用試験後の研修について書きました。

もちろん、研修中は給与もボーナスも出ます。

地方の国税局からですと、研修所に泊まり込みになり出張費が支給されます。

ものすごく恵まれた研修です。

勉強しさえすればいいのですから。

あとは、たくさんの同期と触れ合えるのでとにかく楽しかったですね。

この研修後、税務署へ戻り現場に出るとビックリするくらい大変でした。

束の間の休息、といえば大げさですけど、それくらいいい時間でしたね。

では。

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