建設業経理から学ぶ税務調査シリーズの第7弾。
今回は個人的に注目してほしいと思う印紙税についてです。
税務調査では法人税や所得税の調査と同時に調査されることが一般的です。
しかし、印紙税に詳しい調査官は少なく税理士や経理担当者とレベルは変わらないと思われます。
契約書が多い建設業界
家業が建設会社であり経理を確認していて思うのは契約書が本当に多いんですよね。
工事請負契約書を作成しますし、現金取引があると領収書を発行することも多いです。
「建設業は契約書が多い」というのは税務署側も分かっており、印紙税がきちんと負担されているのかを確認するというのがポイントになっています。
では、そもそも印紙税って何かから説明してみますね。
印紙税は契約書や領収書を作るときにかかる税金
工事をするときには請負契約書を作ったりしますし、現金を受け取ったら領収書を作成し先方に渡すこともあります。
このような法律で決められた書類を作成すると印紙税という税金がかかります。
印紙税の納め方は、以下のような流れです。
- 郵便局やコンビニで必要な収入印紙を買ってくる
- 収入印紙を契約書や領収書などに貼り付ける
- 印鑑を押して再び使えないようにする(消印)
印紙を貼り消印をするのは、契約書であれば契約当事者が押印した時、領収書は発行した時です。
通常、契約書は各当事者が、領収書は発行者が印紙税を負担することになります。
相手と自分で2部契約書を作成するときには、両方の契約書に印紙が必要です。
印紙を貼り忘れた場合
税務調査で印紙を貼り忘れていることが明らかになると、原則として本来の金額の3倍が徴収されます。
ただし、印紙を貼り忘れていることについて「印紙税不納付事実申出書」を提出することにより本来の金額の1.1倍に軽減されます。
また、貼ってあったとしても消印をしていない場合には、本来の金額と同額を徴収されることになります。
これらは全額が経費とはなりません。
3倍になるか1.1倍になるかは調査官の裁量次第ということになりますが、悪質なものでない限りは通常1.1倍かなと思います。
私も1.1倍しか経験はありません。
工事請負契約書の注意点
では、ここから工事請負契約書にしぼって注意点を書いてみようと思います。
契約書は文書名でなく中身で判断される
契約書において印紙税がかかる契約書には、「工事請負契約書」があります。
請負契約書の「請負」とは、請け負った仕事の完成に対して報酬が支払われることをいいます。
建設業に当てはめますと、工事の完成に対して報酬を受け取るという場合です。
この場合の工事請負契約書には印紙税を納める必要があります。
一方で、委任契約書というものも存在します。
委任契約書における「委任」とは、請け負った仕事を行うことで報酬が支払われることをいいます。
仕事を行うこと自体が目的であり、必ずしも仕事の完成を目的としていないことから、この場合は印紙税を納める必要がありません。
では、印紙税を節税したいとなれば、契約書の文書名を「委任契約書」とすればいいんじゃないかと思われるかもしれません。
しかし、契約書は文書名で決まるのではなく中身(文言)で判断されます。
委任契約書となっていても、工事の完成に対して報酬が支払われるという契約になっていたら請負契約であると判断されて印紙税の納付が必要になります。
ただ、実際には請負と委任のいずれかが判断が難しい契約もあります。
印紙税の相談は税務署へお問い合わせいただくといいかと思います。
工事請負契約書の印紙税は安くなっている
工事請負契約書において印紙税を納める金額は、ほかの請負契約書に比べて安くなっています。
平成9年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成される建設工事の請負に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が一定額を超えるものについては、税率が軽減されています
引用:国税庁タックスアンサー
No.7140 印紙税額の一覧表
No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の 軽減措置
ですので、通常の請負契約書の金額とは違う、ということを確認しておいていただければと思います。
電子媒体に記録された契約書は?
工事請負契約書をデータ化しPDFや電子メールで相手方に提出する場合、実際に文書が交付されていないので印紙税がかかりません。
そのためそれを打ち出した用紙等に印紙を貼る必要は基本的にありません。
印紙税は「書類に印紙を貼る」ことでかかる税金だからです。
まとめ
どうしても契約書を作成する機会が多い建設業においては印紙税のチェックも必ず行われます。
税務調査で指摘されやすいところでもあります。
税理士でも見落としがちな部分でもありますので各自で確認をいただく必要があるんじゃないかなと思います。
では。