青色申告決算書を提出すると青色申告特別控除として所得からさらに差し引くことができます。
控除額は65万円・55万円・10万円とあり、やはり税金を安くしたいのなら65万円を選びたいですよね。
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65万円控除を取るための壁
55万円と65万円の違いは、基本的にe-Taxで提出するかどうかの違いだけなのでe-Taxで提出するとして、このほかの要件で特に気を付けたいのは、
- 貸借対照表を添付すること
につきます。
青色申告決算書には損益計算書のほか貸借対照表を作成しますが、10万円控除を受ける場合には損益計算書が作成できればOKです。
いわゆる借方・貸方という複式簿記の仕組みではなく簡易的なものが作成できればとりあえず大丈夫です。
具体的には、いつ・いくらを支払い・何費で経理したかが集計できればOKです。
現金や普通預金などで支払ったかまでは問われません。
しかし、65万円控除を選択するには貸借対照表の作成が必要です。
貸借対照表とは、簡単にいいますと12月31日現在の残高を把握するための表であり、左側と右側で金額を一致させる必要があります。
例えば、消耗品を現金100円で買った場合には、
(借方)消耗品費 100円 (貸方)現金 100円
として消耗品費は損益計算書に、現金は貸借対照表に載せていきます。
残高を把握できるかがポイント
貸借対照表を作成するうえでの大きなポイントは、残高を把握できるかということです。
12月31日現在手元にある残高と、1年間で集計した残高が一致していないとおかしいのです。
貸借対照表にある科目で特に残高を確認しておきたいものを挙げておきます。
- 現金:手元にある硬貨や紙幣の合計と一致しているか
- 普通預金:通帳残高と一致しているか
- 固定資産(建物や車両など):固定資産台帳の金額と一致しているか
- 借入金:返済予定表と一致しているか
これらが一致していないとどこかが間違っている可能性が高いです。
会計ソフトを使っているから65万円控除?
会計ソフトに取引を1件1件正しく入力しますと、自動的に損益計算書と貸借対照表を作成してくれます。
そのため、65万円控除を受ける壁は下がったかのように見えます。
しかし、実際確定申告の相談会場でお持ちいただいた貸借対照表を見てみると明らかにおかしいなと思うことがあります。
- 資産科目の中にマイナス表示のものがある
現金や普通預金がマイナスになっていたり、その他の資産がマイナスになっている。資産とは必ずプラスになりますのでマイナスはおかしい - 現金や普通預金が異常に増減している
これでは貸借対照表を作成したことにはなりません。
先日、「貸借対照表を作成して65万円控除を受けているが資産でマイナス表示になるのはなぜか?」というご質問をいただきました。
12月31日現在の現金残高が1月1日より4倍以上増加していましたので、
お手元に現金ってこれだけ残っているのですか?
と尋ねると、
いや、そんなにないですよ…
とおっしゃっておられたのです。
今年は損失が発生しているために65万円控除を受けることができませんが、来年以降に備えて残高の管理と集計を再度見直していただくことになりました。
残高が合うと損益も合ってくる可能性大
ここまで残高の管理がポイントであることを書いてきましたけど、例えば12月31日時点の普通預金の科目と通帳が一致したとします。
取引は普通預金のみで行っていた場合には、この通帳で収入や経費が集計されてくるはずですよね。
これが一致しているということは、収入や経費の集計も誤りがない可能性が一気に高まることを意味します。
もちろん経費の科目誤りとかはあるかもしれませんが、経費は経費ですので。
もしこれが借方・貸方という複式簿記を使わずに、単に収入と経費のみを集計していたら集計もれがあっても気づかないかもしれません。
貸借対照表を作れるということは自分で残高の管理とともに収入や経費のチェックもできているとも言えるでしょう。
「ここまできちんとできているのだから65万円の控除を受けてもらいましょう!」というものなのです。
なので、貸借対照表を作れるからといって残高があっていないと損益計算書もきちんと作成できているのか怪しい、というわけです。
まとめ
今回お伝えしたかったのは、「会計ソフトの入力ができているから65万円控除を受けていい」と思っている方が多いのかなと思ったんです。
貸借対照表が作れたから、ではなくその中身まで確認して残高が一致してはじめて65万円控除を受けられるわけです。
残高があっているかどうかが実は65万円控除を受ける大きな壁になっています。
では。