年末調整の過納額の還付

年末調整を行った結果、1年間の税額(年調年税額)より先に集計している給与からの源泉徴収税額のほうが大きければ、その差額は納めすぎていたことになります。

これを年末調整による過納額といい従業員に還付をすることになります。

では、どのように還付をしていくことになるのか。

また、会社全体として何をするべきなのでしょうか。

【事務所お知らせ】    

過納額の精算方法

従業員本人への還付方法にはいくつか方法があります。

一般的には、給与支払者(会社)が年末調整をした月に納付すべき「給与、退職手当、税理士等に支払われた報酬に対する源泉所得税額」から控除して還付します。

還付しきれないときは、その後納付すべき「給与、退職手当、税理士等に支払われた報酬に対する源泉所得税額」から順次控除します。

年末調整をした月とは、通常の場合は12月分・納期の特例を承認を受けている場合には本年7月分から12月分です。

このほか、過納額が多額で2か月を経過してもなお還付しきれないとか、会社の廃業により還付ができなくなった場合などは税務署から還付を受けることもできます。

例えば、従業員AとBがいる会社で、年末調整により従業員Aの過納額1,000円、従業員Bの過納額500円だった場合、従業員Aに1,000円・従業員Bに500円を還付します。

それと同時に12月の納付書には会社全体としての還付(A+B)1,500円を記載して差引します。

つまり、

従業員個人には還付、会社全体では納付書で差し引く

というイメージでOKです。

年末調整の過納額に充てることができるのは?

ここでひとつ問題となるのは、年末調整の過納額が出た場合にどの税額から差し引くのかです。

年末調整をした月として納付すべき「給与、退職手当、税理士等に支払われた報酬に対する源泉所得税額」から控除して還付する、と先ほど書きました。

会社全体として控除できるのは、「給与の納付書の範囲内で」と押さえておきましょう。

給与の納付書(一般用でも納期特例用でも同じです)を見てみます。

年末調整による超過税額(05)に、会社全体の年末調整の過納額を記入します。

つまり、

  • 俸給・給与等(01)
  • 賞与(役員賞与を除く)(02)
  • 日雇労働者の賃金(06)
  • 退職手当等(07)
  • 税理士等の報酬(08)
  • 役員報酬 (03)

から生じた源泉徴収税額から差し引くことができる、というわけです。

(01)などの番号ですが、納付データを給与や報酬に区別するためのコード番号であり気にする必要はありません。

事例で確認

では、年末調整の過納額に充てることができる税額を事例で確認してみたいと思います。

当社では、12月25日の本年最後の給与の支払時に年末調整を行いました。この年末調整により生じた還付税額は503,187円でしたが、12月に徴収した税額は次の通りです。この場合、還付に充てることができる税額はいくらですか。
①給与に対する税額 191,420円
②賞与に対する税額 221,440円
③パート・アルバイトの賃金に対する税額 21,640円
④税理士報酬に対する税額 34,112円
⑤退職手当に対する税額 31,700円
⑥原稿料に対する税額 61,260円
引用:令和5年版 年末調整のしかた より

先ほどの給与の納付書を見ていただきますと、原稿料は入っていません。

原稿料は「報酬の納付書」で納めますので、還付に充てることができません。

したがって、⑥を除く①から⑤までの税額の合計500,312円が対象となります。

では、実際納付書を記入してみましょう。

還付税額は503,187円のうち、12月分に還付に充てることができる金額500,312円を超える部分の金額は2,875円です。

2,875円については、翌年1月以降の給与等から還付をすることになります。

この場合、納付する税額は0円となります。金融機関で0円の納付書は受け付けてもらえません。所轄の税務署に提出(e-Tax送信)することになります。提出を忘れると未納状態となりますので注意が必要です。

まとめ

今回は、年末調整が終了したあと過納額があった場合の従業員への還付の仕方と過納額に充てることができる税額・納付書の記入について書いてみました。

タイムリーな記事を書いてみたつもりですので参考にしてみていただければと思います。

では。

 

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