年金の支給繰下げの注意点 税金や保険料も考えて

年金相談では、年金の支給を66歳以降に繰下げてもらう「繰下げ制度」を選択することができます。

この繰下げ制度ですが選択をよく考えないといけないことがあります。

それは、税金や社会保険に影響を与える可能性があるからです。

【事務所お知らせ】  

年金の繰下げ制度の判断

年金の繰下げ制度とは、65歳以降もらえる老齢年金を66歳以降にもらえるようにすると年金額が上乗せされる制度です。

上乗せされる率は月0.7%ですので、66歳でもらうなら8.4%増えるわけです。

この繰下げ制度は老齢年金が対象であり選択肢は大きく4つあります。

  1. 老齢基礎年金と老齢厚生年金両方を繰下げる
  2. 老齢基礎年金のみ繰り下げる
  3. 老齢厚生年金のみ繰り下げる
  4. 65歳時点に遡って65歳時点の本来の金額で受け取る(増額なし)

老齢年金の繰下げの判断は、自分の寿命と収入状況・そして世帯収入の状況により判断いただくことになります。

この繰下げ制度を選択すると65歳時点でもらう方に年金額を追いつくのは約12年後とされています。

例えば67歳で繰下げ制度を選択した場合には79歳にならないと追いつかないわけです。

はたして今の健康状態で79歳まで生きられるのかも考える必要があります。

病院に通院しているとか健康に不安があれば繰下げはあまりおススメしません。

通常通り65歳から年金をもらうほうがいいかもしれません。

また、老齢基礎年金のみ繰り下げる場合は老齢厚生年金は65歳からもらえます。

厚生年金20年以上かけていると配偶者の手当(配偶者加給金)が、原則配偶者が65歳になるまで加算されます。

これは老齢厚生年金を受け取っているからこそもらえるものです。

繰り下げていると土台がないので配偶者加給金は出ませんのでもったいないわけです。

一方で、老齢厚生年金のみ繰り下げる場合は、老齢基礎年金は65歳からもらえます。

もし配偶者が厚生年金20年以上かけており本人の厚生年金が20年未満であれば65歳以降「振替加算」という上乗せがあります。

この場合は逆に老齢基礎年金を繰り下げていると土台がないので加算されません。

あと、65歳時点にさかのぼって受け取る場合ですが、繰下げをしていたけど急遽お金が必要になった場合に有効かなと。

繰下げ全般に共通するのは、本人だけでなくご家族の収入状況(世帯収入)も考えて選択することですね。

勤務状況が家族で変わらないのか、どちらかが退職をして収入が減った分を繰下げ分で賄うのかどうかなど。

年金事務所などに行けば総受給逆転年月については、繰下げ請求月を指定すればいつ頃追いつくのか試算してもらえます。

税金への影響

繰下げを考えるにあたって考えたいもののひとつが税金への影響です。

老齢年金は税法では「雑所得」に分類されて所得税や住民税の対象となります。

1年間の年金の支給金額から公的年金控除額を差し引いたのこりに税率をかけて計算します。

公的年金控除額の最低額は65歳未満で60万円、65歳以上で110万円となっています。

一般的にこの最低額に収まる方が多いので年金を考える際にはこの数字を頭に入れておくといいかなと。

例えば、65歳の方の1年間の年金支払額が120万円だった場合、公的年金控除額110万円を差し引いた10万円が雑所得となり税金の対象となるわけです。

ここで、注意したいのは今の自分の収入状況です。

年金のみしか受け取らないのか、お勤めしながら年金をもらうのか。

年金のみしか受け取らないのであれば、本人に認められている基礎控除48万円を控除することができますので、年金支払額158万円までなら所得税はかかりません。

これは単身者の場合であり、もし障害者だったり配偶者や扶養親族がいれば基礎控除以外の控除も受けられます。

一方で、お勤めされている場合には勤務先から給与を受け取ります。

給与は給与所得という雑所得とは別の区分になります。

税金の計算をするうえではこれらはすべて合計して所得を計算し、基礎控除など控除額を差し引くことになります。

ここからが本題です。

年金を繰り下げると年金が増えます。

年金が増えるということは所得が増えるということ。

所得をもとに税金は計算されますので、元が増えたら当然税金もアップすることになりますね。

さらに、所得をもとに計算される保険料(介護保険料と国民健康保険)にも影響がありますので慎重に判断したいところです。

気になるようなら試算をしてみるといいでしょうね。

所得税は税務署、住民税や介護保険料・国民健康保険は市区町村役場が担当です。

年金事務所は税金を計算するところではありませんので質問しても答えてもらえません。

65歳時へのさかのぼっての支給に注意

65歳時点にさかのぼって本来額をもらう場合はさらに注意が必要です。

請求をしますとさかのぼった分が一括で入金されてきます。

しかし、税務上は一括でもらったものであってもそれぞれの年でもらったことにするという取り扱いになっています。

そのため、年金をもらったら「年金の源泉徴収票」が発行されますがそれぞれの年ごとのものが発行されるのです。

それぞれの年でもらったことになる
→それぞれの年の年金収入が増える
→それぞれの年の所得が増えて
→税金の対象となる金額もアップ

という流れになります。

場合によっては過去に提出した確定申告書の金額を修正しないといけませんし、最悪の場合には追加で税金や保険料を支払う、といった場合も考えられます。

お勤めの方は年末調整をすれば基本的に確定申告は不要ですが、年金を遡ってもらうことによりそれぞれの年の確定申告をしないといけません。

これが手間に感じる方もおられますね。

案内をすると「やっぱりやめときますわ」って。

なので、65歳時点に遡ってもらうのは大きな出費が想定されるなど緊急性がある場合や税金や保険料を払ってでも手元にお金が欲しいときに考えるといいかなと。

まとめ

ちょっと長めの記事になりました。

年金の繰下げ制度をどう選択するかによって税金や保険料に影響を与えることがあります。

まずはいつ繰下げ請求をするのかと年金の見込額を年金事務所などで試算してもらうといいでしょうね。

では。

 

 

 

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